今回は、テクニカルランディングについてのお話です。
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テクニカルランディング(以下テクランとします)とは?
給油目的で、目的地の途中の空港に着陸することです。ところが現在は、旅客機に乗って海外に出発する際、途中でどこかの空港で燃料を給油するために着陸するということはありませんね。
しかし、航空機の航続距離が短かった時代は、このような作業が行われていました。特に有名なのは、日本やアジアからアンカレッジを経由してヨーロッパ方面に向かう旅客便です。
しかし航空機の航続距離が延び、物理的には日本からヨーロッパに直行することができた1980年代に入っても、アンカレッジでテクランをする便は存続します。
その理由は、当時のソ連が領空を通行することを認めていなかったため、という理由があります。しかし、それも1991年にソ連が崩壊して以降、消滅することとなります。
プライベート機や貨物機テクニカルランディング
テクランがほぼ消滅した定期旅客便の世界ですが、プライベート機と貨物機の世界では健在です。
例えば、プライベート機オーナーに人気のGulfstreamIV(ガルフストリーム4)という機種ですが、航続距離は約8,060kmです。この機体は日本から中国、東南アジアといった、近距離での使用に向いています。
しかし、この機体が羽田からサンフランシスコに飛行する場合を想定してみましょう。
HND-SFOの両空港間の距離は8,280kmとなり、航続距離が足りません。そこで、ANC(アンカレッジ)でテクランを行うと、無事サンフランシスコまで行くことが出来るというわけです。
最初から航続距離が長い機体を購入すればいいでは?と思われるかもしれませんが、航続距離が長い機体は機体も大きく、空港において駐機できるスポットも限られてしまいます。
私がプライベート・チャーター機のハンドリングを行っていた際のことです。
航続距離が長く、東京からアメリカ東海岸まで無給油飛行が可能なGulfstream650という機種を使っていたオーナーが羽田空港への発着を希望していました。しかし、この機体が駐機できるスポットが空いていないという事態が発生し、結局成田を使ったという記憶があります。
小回りの利く小さなGLF4を所有し、中国から日本、アンカレッジを経由してアメリカに向かうオーナーも多いです。この場合、燃料だけでなくケータリングを搭載することがあります。大変ではありますが、一度着陸して外の空気を吸えるというのも、PAXやCREWにとって気分転換にはなりますね。
貨物機については、未だにアンカレッジでテクランする機体が多いです。
貨物を満載している状態だと、特に長距離の場合、テクランなしで目的地に到達することは難しいとのこと。
まとめ
機体オーナーにとって、普段は近距離利用が多いけれども、たまには長距離運用もするという場合は、テクランは重要な選択肢だと考えます。つまり、目的地の空港でスポットが確保しやすい、小回りが利く機体を運用するということですね。
定期便を運用するエアラインでも、A320やB737といった機体を長距離移動させる場合、テクランを行う場合があります。私が経験した、ちょっと大変なエアラインのテクランについては、以下の記事でお話しています。
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