嵐の夜のテクニカルランディング

前回の記事で、テクニカルランディング(定期便とプライベート機)について、お話ししました。

今回はある東南アジアのエアラインから、突然のテクランリクエストに応え、ハンドリングした経験についてのお話です。

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テクランの兆候

話はテクランハンドリングの数日前に遡ります。あるカンボジアのエアラインが、所有するA320機をアメリカに移動させたいとのこと。しかし、カンボジアからアメリカに直行するには航続距離が足りません。そこで、HND(羽田)とANC(アンカレッジ)でテクランを検討している旨の連絡がありました。

そのため、発着枠のスロットと駐機場所であるスポットを取得して欲しいとのリクエストでしした。しかし、もう一つ課せられた条件がありました。

それは、APU(Auxiliary Power Unit、補助動力装置)という電力、圧縮空気、油圧を航空機に供給する装置が故障しているというもの。そのためASU(Air Starter Unit)という圧縮空気を送り込む装置の手配が必須でした。

APUは、エンジン始動のために圧縮空気を送り込む機能を持っています。従って、APU故障した状況で到着時エンジンをシャットダウンすると、再びエンジンを起動することができなくなってしまうという状況でした。

スロットは深夜03:00着、04:00発というもので、スポットと同時に無事取得できました。

しかし、問題はASUでした。この時間にASUを用意してくれるグラハン会社が見つかりませんでした。

その旨をエアラインに伝えると、ASUがないのであれば、テクランはしないとの回答。その日は何事もなく、終了しました。

その3日後、突然のハンドリングリクエストが…

その後、一応スロットはキープしておこうという結論になりました。私はその日遅番で、21:00までの勤務でした。

テクランはやっぱり来ないかなと思っていた20:00過ぎ、衝撃のメールを受信します。前述のカンボジア機が、REP(シェムリアップ)を出発し、羽田に向かっているとのこと。ETAは、取得していたスロット通りの03:00ちょっと過ぎです。

さて、そこからが大変です。マーシャリング、チョーキング等のグランドハンドリングサービスの手配は、正式なリクエストを受けていなかったため、もちろん手配していませんでした。

いつもお世話になっているグラハン会社に、急遽依頼します。しかし、最大の問題であるASUを用意できる会社は、なかなか見つかりません。

一緒に勤務していた先輩と、急遽空港中の会社に確認する作業を行います。ようやく大手日系エアライン系列のグラハン会社から、ASUを用意できるとの回答が得られました。しかし、深夜ということもあり、驚きのお値段でした。

エアライン本社があるカンボジアに電話し、かなりの高額だが大丈夫かと一応念を押します。先発の回答はもちろんokでした。

嵐のテクランハンドリング

そうして、GD等書類を大慌てで準備し、CABやCIQ等の関係各所との調整を何とか終了しました。あとは現場に向かうだけです。しかし当日は台風ではないものの、大雨で気温も低い、嵐の夜でした。

機体がブロックインするのを待つ間、雨が身体に激しく当たってきます。ランプエリアのコンクリートにたまった水が、革靴の仲間で侵入してきます。おかげで、革靴もずぶ濡れとなります。

程なくして、機体は無事ブロックインし、ドアオープン。180人が乗れる機体に、コクピットクルー2名、メカニック1名の計3名だけが乗務していました。

ASU接続の上、燃料補給を急ぎます。シップ作業は、先輩がスーパーバイズすることになり、私はCIQに行き、GD配布等の作業をすることになりました。

この写真のように、稲妻が光りまくっていました。

最後に税関取締本部で、出港印をもらおうというとき、先輩から電話を受けます。CPTが早く出発したがっているとののとで、搭載書類を持って急いでシップに戻ります。

無事搭載書類をCREWに渡し、無事ドアクローズの後、ブロックアウト。オフィスに帰って簡単に記録をつけ、即退勤しました。帰宅後、シャワーを浴びて爆睡でした。

まとめ

突然のハンドリングリクエストは、プライペート・チャーター機会社勤務の時代、しばしばありました。

しかし、ここまでヒヤヒヤしたハンドリングはなかなかありません。必要な機材をなんとか準備でき、無事に機体を送り出した瞬間は、本当に達成感がありました。

当日の残業時間はなんと、7時間ほどとなりました。疲労感も非常に強かったですが、未だにあの日の大雨、感じの良いCREW、機内のカンボジア臭や非常口サインのクメール文字は忘れられません。

※本文画像は、無料画像Pixabay(https://pixabay.com/ja/)からお借りしました。