今回は、以下の患者搬送便事故のニュースについてです。
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事故の概要
【マニラ時事】フィリピンの航空当局によると、29日午後8時(日本時間同9時)ごろ、マニラ首都圏のニノイアキノ国際空港で、離陸直後の小型機が墜落した。小型機は医療救助の目的で東京・羽田に向かっていた。カナダ人と米国人の乗客2人と、フィリピン人の乗員6人が乗っており、8人全員が死亡した。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032900322&g=int
時事ドットコムニュース 羽田行き小型機墜落 マニラの空港、8人死亡
患者搬送目的のチャーター便の墜落事故ということで、私も非常に衝撃を受けました。
私も以前プライベート・チャーター機のハンドリング会社で、患者搬送便を担当したことが数回あります。
Wikipedia IAI ウェストウィンド
今回事故を起こしたIAI ウェストウィンドは、名~10名が搭乗可能で、航続距離は5,375kmとのことです。5,300kmというと、HND(羽田)~SIN(シンガポール)の距離とほぼ同じとなります。
https://flyteam.jp/photo/2695556
Fly team aviation community
IAI 1124 Westwind (RP-C5880) 航空フォト
上記サイトの写真によると、2018年12月14日にHNDに飛来しているようです。
患者搬送便で使用する機体、クルー構成など
私が以前担当した機種については、型式を細かく覚えていないのですが、搭乗人員の数も、事故機とほぼ同じだった記憶があります。
乗員構成は、運航乗務員2名、メディカルクルー(医師、看護師数名)、患者様本人、付き添いの家族といったものです。
今回の事故機もそうですが、小型の機材に医療機器も多く搭載し、乗員も機体の大きさに比べるとかなり多いと言える状態です。重量バランスに問題があったのでしょうか。
ちなみに大きな機体を使用せず、これほどの小型機で運航する理由は、飛行中に患者が急変した場合、小さな空港にも着陸できるようにという理由があります。大型機だと、滑走路の長さがあることが要求されますので、患者さんが急変していざ着陸しようとしても、滑走路の長さの問題で降りられないという事態が発生してはまずいからでしょう。
この機体は、MNLからHNDへ東京で治療を受ける患者を搬送中だったとのことです。MNL-HND間はほぼ3,000kmほどで、この機体の距離からすれば余裕のある距離です。しかし、搭載している医療機器、物資8名搭乗ということを考えればかなりの重量だったのではと考えてしまいます。
患者搬送便クルーの使命感と患者さんへの感情移入
私が患者搬送便を担当して感じたのは、医師や看護師といったメディカルクルーはもちろん、パイロットに関しても、人の命の救うというミッションのもと、通常のフライトとはまた異なる使命感を強く抱いているクルーが多いなということです。
ハンドリング会社には、患者搬送便の運航会社を通じてオーダーがあります。その際に。その患者さんがどういう経緯、症状でチャーター機による搬送が必要という経緯を記した文章を受け取ります。
患者さんは、留学先、出張先として赴いた国で、災難に見舞われているのです。そういった経緯を知るうち、私はハンドラーとして円滑なハンドリングをして、搬送先の病院で、患者さんが一刻も早く適切なケアを受けられるよう願う気持ちが強くなったのを今でも鮮明に記憶しています。
こういった社会的に責任のあるフライトの一端を担うことについて、私自身も誇りに感じました。
まとめ
患者搬送便のハンドリングに携わった一員として、今回の事故機で亡くなったコクピットクルー、メディカルクルー、患者さんとその付き添いの方に、哀悼の意を述べさせていただきます。
羽田空港でこの機体を到着時ハンドリングする予定だった会社のスタッフも、大きなショックを受けていることと推察します。
ハンドリング予定のフライトが墜落するという事態は滅多にないことです。また、その患者さんがどういう経緯で羽田に搬送予定だったかは不明ですが、そのフライトの安全を願い、受入準備をしていた方々は、悲痛な思いをされているに違いありません。
より適切な医療を受けるために、チャーター機を運航し、国を超えて転院というオペレーションを行うのに、よりによってその航空機による航空事故で、患者さんや関係者が亡くなってしまうのは、本当にやり切れません…
※本文画像は、無料写真AC https://www.photo-ac.com/よりお借りしました。