A350が2日で貨物機に転用可能に

当ブログの過去記事で、旅客機のキャビンを使用して貨物輸送を行うオペレーションが、世界各国のエアラインで活発化しているという話題をお伝えしました。

今回もコロナウイルスによる航空業界の影響について、海外ニュースサイトからの記事をご紹介してお話します。 現在世界各国で、外国人の入国制...

今回はそこから更に進化し、キャビンまで貨物機仕様に改造してしまおうという話題です。

コンテンツ

A350の貨物機転用改造

以下記事要約

エアバス社は、A330やA350といったワイドボディの機体を所有するエアラインに対し、地上に留め置かれているこうした機体を活用し、収益を得るための策を公開した。

既に複数のエアラインが、A350を貨物機として使用しているが、そのほとんどは座席を残したまま、単にその上に箱を積みことで貨物機として使用している。

エアバス社の改造策は、こうしたワイドボディ機のキャビンをも、貨物輸送に使用することが可能とする。この改造により、座席を残したままの状態よりもはるかに多くの貨物輸送が実現できる。

旅客機のキャビンを貨物機として改造するには、機内のエンターテイメントシステムやギャレー設備、シートに付属しているコンセント設備を撤去するなど、防火対策を講じる必要がある。そして、キャビンクルーが貨物の安全を確認するために、定期的な機内の巡回を行う必要もある。

要約終わり

本格的な旅客機の貨物転用の契機となるか?

日本における緊急事態宣言も、延長が極めて濃厚となりました。世界各国でも韓国を除いて、まだまだ外出に極めて厳しい制限がかかっている状況が続きそうです。行動制限が緩和されても、各国の防疫体制を厳しいレベルで維持するのではないかと、私も考えています。

こうした情勢から、エアライン各社とも今後更に厳しさを増す、冬の時代に備える策の一環として、旅客機の貨物転用を本格的に検討する段階に突入しているのではないでしょうか。

貨物機としてキャビンの旅客設備を撤去し運用するには、シートの撤去はもちろん、上記要約中にもあるように、防火対策等も施す必要があります。また、運航中にもクルーの巡回が必要となるようです。

以上のような手間は要しますが、改造のために整備士、実際のハンドリングにより多くのグラハンスタッフが必要になると見込まれます。運航中の機内巡回に関しても、訓練を実施した上で、旅客担当のCAに行ってもらうということも考えられます。本格的な貨物機転用改造をすれば少しではありますが、ハンドリング人員増加に伴い、雇用の維持に貢献できるのではないかと考えました。

キャビンへの貨物搭載で気になること

旅客機仕様の機体のキャビンに貨物を搭載する際、気になったのがドアの幅です。

A350には、機体の左右にそれぞれ4つのCREWならびにPAX用のドア(1L-4L、1R-4R)があります。しかし、幅はそれぞれ1.26m(以下のエアバス社資料、6-9pより)です。

https://www.airbus.com/content/dam/corporate-topics/publications/backgrounders/techdata/aircraft_characteristics/Airbus-Commercial-Aircraft-AC-A350-900-1000.pdf

エアバス社 A350-900/1000機体の特徴データ

貨物専用機のメインデッキ(旅客機のキャビンに相当する部分)のドアは、幅が3メートル前後となっており、コンテナを直接搭載できる構造になっています。

A350を貨物転用する際、キャビンのドアの狭さゆえに、コンテナを直接搬入することはできません。搭載の際は、グラハンスタッフによる手作業になりそうですね。やはり純粋な貨物ではないので、こういった作業ゆえのハンドリング時間増大や、ハンドリング人員も多く求められることが考えられます。

まとめ

貨物機として製造された機体には、使い勝手は遠く及ばないと思いますが、エアライン各社としても、ただ地上に機体を駐機したままの状態よりも、遥かに有益な使用方法ではないでしょうか。

ただ実際には機体の改造コストも要するため、限定された機体での運航に限られそうです。エアラインはあくまでPAXの輸送がメインですし、コロナ終息と旅客需要の復活も見据えて改造する機体数を決定することが必要ですね。時々刻々と変化する状勢や、社内の人員運用も考慮した判断が求められ、難しい面も多々あると思います。

キャビンをも貨物仕様に改造するというオペレーションが、エアライン各社に少しでも利益をもたらし、この状況を乗り越える一助となって欲しいと願います。