旅行から帰ってきて、バゲージを受け取るターンテーブル。様々なPAXのバゲージがひしめくその場には、ある危険が潜んでいます。
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クロスピックアップ
色々なバゲージが回転する国際線ターミナル到着ロビーの税関構内です。ある便の全てのPAXバゲージが返却されるターンテーブルは、油断ができない場所と言えます。
フライトが到着し、バゲージが続々と返却されていきます。ファーストクラス、ビジネスクラスといったように、ステータスの高いクラスのPAXのバゲージから返却が開始されます。他のPAXが順調にバゲージを受け取り、税関カウンターを経て帰路につきます。
しかし、あなたがバゲージはいつまで経っても出て来ない…ところが、あなたのものによく似たバゲージが最後に1つ残されていました。どうやら、あなたのバゲージを自分のものと勘違いし、受け取って帰宅したPAXがいるようです。
そういったケースを、クロスピックアップと呼びます。他人のバゲージを。自分のものと思って持って行ってしまったという厄介なケースのことをそう呼びます。
私がグランドスタッフとして経験した、クロスピックアップ
ある夜、私はいつものように到着LL担当として、ターンテーブルの側にスタンバイしていました。東アジア某国からの便でした。未着の情報も入っておらず、順調にPAXのバゲージの返却が続いていました。
現地から日本への旅行客も多く、添乗員もいて団体のPAXを誘導していきます。今日も何事もなく、到着LL業務は終わるかなと漠然と考え、バゲージがはけるのを待ちます。
しかし、そう甘くはありませんでした。
ターンテーブルに最後まで、1つのバゲージが残ります。その傍らには、困惑した表情のPAXがいます。そのバゲージを受け取れば、私のLL業務は終わって休憩に入れるはずでした。ところが、その外国籍のPAXが私に声をかけてきました。
そこにあるバゲージは、自分のものに酷似しているいるが、違うとのこと。すぐさま、そのPAXが所持しているバゲージタグの控えを確認します。やはり、タグナンバーは異なっています。
ここで、クロスピックアップが確定しました。
クロスピックアップの対応
発生してしまったものは、仕方がありません。こういった場合、即座に空港のインフォメーションに依頼し、その場に残されたバゲージの持ち主であるPAXを呼び出します。そこでPAXが無事SHOW UPすれば、無事対応は完了となります。
その対応で無事にケースクローズといった場合も中にもありますが、そう甘くはありません。多くの場合、自分のものであると勘違いしているからこそ、他人のバゲージを自宅に持って帰ってしまうのです。
その場合、その場に残ったバゲージには。「代理通関」という作業を実施する必要があります。そして、保税区域である「ボンド」に収納します。本当の持主に代わって、グランドスタッフが後ほど通関する必要があるためです。
そこで私は、そういったケースの対応方法として定められている、代理通関の手続きをすべく、PAXの対応をしようと考えました。その場ですぐ、持主である別のPAXにコンタクトすることはできないからです。
バゲージを取り違えられたPAXが採った手段とは?
しかし、そのPAXが採った手段に私は驚きました。その場に残されたバゲージには、PAXの指名と電話番号、メールアドレスが記載されていました。そこで、取り違えられたPAXは、その電話番号をアプリに入力して、チャットでコンタクトを取ったのです。
間違えてしまったPAXは、空港近くのホテルにチェックインしたばかりでした。本来のバゲージを取りに来るべく、空港に向かうとのこと。間違えられたPAXは、税関構内でスタンバイすることになりました。
20分程して、間違えたPAXが空港にSHOW UPしました。そこで、手順通りに代理通関を行い、ひとまずバゲージを税関構内から出します。間違えたPAXと、間違えられたPAXを直接会わせないようにし、本来の持ち主に渡します。
そこで、無事ハンドリングは終了しました。驚いたのは、どちらのバゲージも全く同じメーカーの同じものということです。これでは間違えるのも仕方ありません。区別がつくように、氏名等を記載したタグは取り付けられていたものの、目立つものではありませんでした。
正直、これは仕方がないなと思ってしまいました。
まとめ
海外旅行から帰り、日本に到着した途端に自分のバゲージを間違えられて持って行かれてはたまりませんね。しかしスーツケースは量産品である以上、世の中には自分と同じスーツケースを所持しているPAXは必ずいます。そういったケースに備え、目立つ目印を付けることを、元グランドスタッフとしてはおススメします。
自分にとっても、相手にとっても。そしてグランドスタッフをも巻き込んだちょっとした騒動になってしまうクロスピックアップ、十分に気を付けたいものです。
ターンテーブルからバゲージを受け取る際は、バゲージのタグナンバーと氏名をよく確認しましょう。それが、クロスピックアップを防止する唯一かつ確実な方法です。