以前、国際情勢と国際線定期便という記事で、国際線フライトをハンドリングするスタッフは、国際情勢にとても影響を受けやすいということをお伝えしました。
それに関連して、航空業界の現場で勤務した一労働者の立場から、航空業界の雇用情勢についてより詳細に書いてみます。
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アルバイト・契約社員・派遣社員といった非正規雇用が非常に多い
私がグランドスタッフとして勤務していたハンドリング会社でも、こういった非正規の勤務体系の人が多かったです。1年の雇用契約であれば、一般的な感覚では短いと思われる方も多いでしょう。
しかし、派遣社員も会社によってはかなり多数おり、その場合は3か月に雇用契約を更新するのが一般的です。大規模なハンドリング会社だと、複数の派遣会社にスタッフを発注しており、派遣社員が貴重な戦力となっている場合も多いです。
非正規雇用が多い理由をこの情勢で痛感
非正規雇用といっても、アルバイトや契約社員でもなく、派遣社員が多い理由については、当時深く考えたことはありませんでした。私の会社の採用担当に聞いたことがありますが、その際は人がなかなか集まらないと言っていたのを覚えています。
しかしそれだけではないのが、今回のコロナウイルス感染拡大による現状で見えてきたのではないでしょうか。私の友人でハンドリング会社時代の元同僚の職場も、派遣社員を多く雇用していました。しかし、言うまでもありませんが、直接雇用のアルバイトや契約社員に先行して、真っ先に雇用契約を切られてしまったそうです。
元々派遣社員は、流動的なマンパワーへの需要に柔軟に対応できる存在として、利用されてきました。つまりこのような状況下では、真っ先に契約を切られる可能性が高いです。
特に国際線定期便をハンドリングしている会社では、派遣社員を戦力としつつも、情勢の急変に備えていると言って差し支えないでしょう。平時であれば、派遣社員として勤務するメリットもあると考えています。空港内でも派遣社員として勤務していて会社から評価され、正社員に登用された人も何人か知っています。
しかし、現在のような国際情勢の急変があると、真っ先に影響が及ぶ存在ということは、悲しいですがよく知っておく必要があります。
派遣社員の面接で聞かれることとの矛盾
私も以前、どうしてもやりたい業務があり、派遣社員として勤務することを考えていたこともあります。面接(建前上は面談ですが…)では、長く勤めて欲しいと採用担当者が言う割に、雇用期間は3か月毎ですし、何かあれば切られてしまう。この点に、大きな矛盾を感じ、結局就業は見合わせました。
雇用側からすると、もし優秀な人がいればそのうち正社員で雇用することができるし、そうでなければ、契約を更新せず雇止めにすれば済みますね。労働者には厳しい点も多いと思います。
非正規労働者が多いことのデメリット
非正規労働者ばかりだと、どうしても勤続年数が短くなります。航空業界、特にハンドリング会社では、勤務の過酷さや給与の低さもあり、人の出入りが激しい傾向があります。
しかし前述したように、労働者を短期間で切りやすい(もしくは辞めやすい)仕組みがあることが、この流動に拍車をかけているのではと私は思っています。
よってハンドリング会社では、入社年次や経験の浅い社員が多く、技術継承という面で大いに問題があると、私は思っていました。
まとめ
現在、バージンオーストラリア航空や南アフリカ航空が経営破綻し、正社員でも雇用は安泰とは言えない極めて厳しい状況になっています。
コロナ収束時には、航空業界から多くの人材が流出し、需要が元に戻る頃には、労働者を切りすぎてハンドリングに必要な人員が確保できないという事態も、充分起こり得るのではないでしょうか。
私自身、航空機のハンドリングはすごく好きな仕事でした。しかし、国際情勢と業界の雇用との密接な関係に、恐怖すら抱く状況となっています。