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航空機のダイバート
何らかの原因で、目的地の空港に向かうことが出来ず、別の空港に着陸することをダイバートと言います。以前の記事でも、お伝えしています↓
今回は、成田へのダイバート事例と発生する確率、ダイバートのコストといった話題を中心に、以前のダイバートに関する記事とは異なる切り口で、お送りします。
2021年1月7日に発生したダイバート
この日全国的に非常に風が強く、成田空港に着陸する予定の航空機が、何機か羽田にダイバートするというケースが発生しました。
普段は羽田に就航していない、カーゴルクス・イタリアがダイバートしたのが珍しいですね。
成田到着便が他空港にダイバートする可能性は?
成田空港は横風用(2本とも滑走路の向きが同じ)の滑走路がなく、強風の際には羽田にダイバートすることがある、と私も認識していました。しかし、調べてみると、確率は本当に低いものなのですね(2016年の資料では、0.03%)。
現状においては、開港後数十年が経過し、この間に航空機の飛行性能が著しく進歩し、成田空港の運用実績においても横風を含む強風等の理由で他空港へダイバートした便の比率は過去10年間で0.03%※と極めて少ないことから、横風
用滑走路の必要性は低くなっている。※ 2006~2015年度の10年間における総着陸回数に占める強風によるダイバートの割合
成田空港の更なる機能強化に関する調査報告について(その3)p6より
https://www.narita-kinoukyouka.jp/document/160927_02.pdf
ダイバートした際のコスト
ダイバートの発生要因にもよりますが、例えばエンジントラブルの場合だと、修理費用や代替機の運航・手配に係る費用等があります。
着陸料や停留料といったコストも、ダイバート先の空港に対して支払う必要があります。しかし、着陸料に関しては例えば、航空機が出発空港に戻る場合、着陸料や停留料を減免する場合が多いようです。
例えば関空の場合、「関西国際空港空港供用規定」にその旨が規定されています。
(使用料金の免除)
第14条 会社は、第13条第1項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する着陸又は停留について
は、その使用料金の全部又は一部を免除することがある。
(1) もっぱら外交上の目的に使用される航空機の着陸及び停留
(2) 空港を離陸後やむを得ない事情のため他の飛行場に着陸することなしに空港に着陸する場合の着陸関西国際空港空港供用規定 p5
※ここで言う「空港」とは、関空のことです。関空を出発し、やむを得ず関空に戻る場合のことですね。しかし、「免除することがある」とのことですので、一概には断定できず、ケースバイケースで判断するということでしょう。
ダイバートで発生したコストの具体例
エールフランス航空のA380がエンジントラブルによるニューファンドランドへのダイバートで、1000万円程のコストを支払ったケース。スイス航空に至っては、エンジントラブルでカナダ北部にダイバートして、エンジンそのものを交換し、なんとエンジン単体で27億円のコストが発生してしまったケースがあります。
※因みにB777の価格は、450億円余りです。
まとめ
航空会社にとっても、多額の費用を負担することになり、非常に痛手ですね。ダイバート先でのハンドリングは、普段契約していない会社に委託するケースも多々あると思います。また、委託しようとする会社も、定期便のハンドリング等で、すぐに手が空かないケースも想定されます
国際線フライトであれば、PAXが降機する場合、CIQ(税関・入管・検疫)の対応も必要となりますし、地方の小さな空港にダイバートとなれば、対応してもらうために、時間を要する可能性があります。こういった点で、色々な困難が伴う可能性がありますね。
※アイキャッチ画像は、本文とは関係ありません。