LL業務とは
グランドスタッフの業務の一つに、LL業務というものがあります。手荷物が返却されるターンテーブルの側に立ち、荷物が出てこない、破損しているというPAXの申告に応じた対応を行う到着担当です。
詳細に関しては、以前の記事でご紹介していますのでご覧ください。
本来であれば、1人のグランドスタッフが同時に担当するのは、当然1便です。私が在籍していた会社でも、最初はそうでしたが…
1人で2便を同時に担当するという魔のオペレーション
ある日、私が出勤すると上司が声をかけてきました。新たに受注したエアラインの研修を行うため、その日はLL担当が1人足りなくなるということです。
そこで、A社のLL業務を担当することになっていた私が、そのスタッフが担当するB社のLLも同時に担当してほしいとのこと。B社のLL業務に関わったことがない私は、当然B社のレギュレーション、ルールは知りません。
そのことを伝えると、カウンターの責任者も無線でフォローするし、これから数日間だけだし大丈夫とのこと。
こうして、不安を抱きながらBC(到着ホール)に向かいました。
2便同時オペレーション初日
オンタイムであれば、A社が到着して15分ほどしてB社が到着という流れでした。初日に関しては、この2社ともオンタイムで、バゲージの未着もありませんでした。無事終了で、何もなければ大したことないと思いました。あくまで何もなければです…
そして数日が経過して
このオペレーションを開始してから数日が経過し、新規エアラインに関わっていたスタッフの研修も終了しました。当然以後は、1人で1便を担当するというオペレーションに戻るのだろうと思っていました。
しかし、B社のチェックインを担当するスタッフが1人足りない状態で恒常的に業務を行なっていたため、2便同時ハンドリングのオペレーションを継続して欲しいとのこと。
こうして、この状況は続くことになってしまったのでした。
2便同時にイレギュラー発生の日
その日は何か嫌な予感がしていました。
B社の現地を出発してETAが出ます。しかし、到着が遅れているとのこと。B社の出発地は混雑空港でもあり、ATC(航空管制)の都合でDLYすることは珍しくなかったのですが、更に機材繰りの関係で遅れが増したとのことです。
A社については定刻通りでした。A社便が到着し、バゲージ返却が開始されます。この時点では何のイレギュラーもなく、順調でした。
そして遅れてB社便が到着します。予想はしていましたが、遅延証明書を求めるPAXが複数。そして遅延に焦ったのか、全部バゲージの返却が終了していない段階で、バゲージが出てこないという気が早い深刻をしてくるPAXもいます。
航空機に搭載されたバゲージは、コンテナに搬入し、そのコンテナをドーリーという車両で牽引してターミナルに運びます。当然、バゲージは全部同時に搬入することはできず、順番にターミナルに運ぶ必要があります。最初のバゲージと、最後の場ゲージではかなりの時間差があります。
それを知らず、焦って深刻したということです。色々な問合せに追われる時間が続きました。
A社PAXからのコンタクト
そして、対応が終わったと思っていたA社のPAXが空港のインフォメーション経由でコンタクトしてきた旨を、カウンター担当が無線で私に伝えてきます。
機内にお土産を忘れたとのこと。当該PAXのシート番号を聞と、先ほどゲート担当が情報を流していたお忘れ物であることが判りました。しかし、保管してしているゲート担当もまもなくボーディングが始まるため、こちらに届けに来ることは出来ないとのこと。
PAXはインフォメーションで待たれているとのことですが、誰も現場に向かうことは出来ません。私はB社便の対応に追われることとなり、結局そのPAXの元には行けませんでした。当然、PAXからはインフォメーション経由でB社に苦情が入ることとなりました。
まとめ
その他にも、2便同時に未着が発生したりと、様々な出来事が起こるのですが、ここには書き切れません。本来ではあってはならないオペレーションですが、空港の職場はどこも人手不足です。余剰人員というのは基本的にはいません。
到着業務は、敗戦処理のような後ろ向きな仕事です。チェックインカウンターであれば、これから始まる旅行への期待感を胸にしたPAXを、こちらも笑顔で対応するという楽しさがあります。
しかし、到着LL業務に関しては違います。フライトが遅れれば、謝罪しながら遅延証明書を配布し、荷物が未着になればまた謝罪です。基本的に到着LL業務というのは、エアラインのミスに対するリカバリー作業(ATCによる遅延等、エアラインに非のない事象もありますが…)を、到着現場で一手に引き受ける過酷な担当でもあります。
2同時に引き受けるということは、単純に言えばこれらの負担が2倍になるということです。これは本当に堪えました。
グランドスタッフ時代に、最も大変だったエピソードの一つについての話題でした。