前回お伝えした、出発ゲートでのバゲージハンドリングその2です。前回は、出発前にゲートバゲージをチェックインする作業までをお伝えしました。
下記のリンク先記事をご参照ください。
さて、今回はボーディングが始まってからの流れです。
コンテンツ
ボーディング開始後のゲートバゲージハンドリング
ボーディング前にゲートにSHOW UPしていたPAXのゲートバゲージを順調にチェックインしました。しかし、フライトは満席でキャビンに余裕を持って収まるとは言えない状況です。
いよいよボーディング開始です。
ボーディング開始後しばらくは、これまでハンドキャリーをチェック済みのPAXのゲート通過がほとんどです。しかし後半に差し掛かると、まだハンドキャリーのチェックをしていないPAXがゲートにSHOW UPします。ゲート通過前に、ゲートのスタッフがパスポートならびにBPをチェックしますが、その際にハンドキャリーのチェックをすることが重要です。
後半になればなるほど、出発時刻が迫ってきますので、時間的な余裕はありません。規定をオーバーしているPAXを発見したら、列の外に誘導し、バゲージのチェックイン作業を即実施します。マニュアルタグをささっと記入し、控えをPAXに渡します。
PAXのオールゲートスルー(搭乗予定のPAX全てがゲートを通過すること)が迫っているときは、グランドスタッフも焦りますが、慎重に作業をする必要があります。必要事項の記入を忘れてしまった場合、最悪の場合は誰のものか分からなくなってしまうケースも考えられるからです。
ゲートバゲージは一か所に集めておき、ゲートのエレベータを降りてL/Mさん(ロードマスター、その機体の搭載責任者)に渡します。
ゲートを通過するPAX全てのハンドキャリーバゲージをチェックしたら、ゲートでのバゲージについての作業は終了です。
シップでのバゲージハンドリング
全てのPAXがゲートを通過しても、シップではまだ多くのPAXがシートに着席していない状態となります。シップサイドに待機しているスタッフが、機内の状況を見守ります。
ここでも、ゲートバゲージが発生する可能性が十分にあります。
厳しいパーサーだと、免税品を片っ端から積み上げて、これをチェックインしろと言われたこともあります。
カウンターやゲートでここまで厳しくチェックするのは、機内の乗客の流動をスムーズにするためという意味もあります。特にA320やA321、B737といった単通路の機材では、前のPAXがキャビンのオーバーヘッドスペースにバゲージを収納するために通路に立ち止まると、後ろのPAXの動きが止まり、ボーディングに影響が出ます。
ボーディングが後半に差し掛かると、キャビンのオーバーヘッドスペースの余裕もなくなります。CREWもPAXも、空いているスペースを探す時間を取られてしまうため、ボーディングの動きも停滞してしまします。こういった事態を最小限に抑えるため、ゲートバゲージを可能な限り多く取るというオペレーションが必要なのです。
キャビンから集めたゲートバゲージは、PBB脇の階段を下りてL/Mさんに渡します(時間があれば、取りに来てくれることもあります)。
まとめ
PAXのハンドキャリーバゲージを適切にハンドリングできるかという要素は、出発に大きな影響を及ぼします。バゲージハンドリングのみならず、今後発生し得る状況を推定し、予め予防策を講じるということが、航空機ハンドリングにおいては非常に重要です。
ゲートバゲージを預けてもらうように頼むのは、特に規定内に収まっているPAXに対しては最初は難しいと感じることもあります。ルールに従ったハンドキャリーバゲージを所持しているのに、更にチェックインしてくださいとお願いするからです。しかし、PAXにとってもハンドキャリーの荷物が減るというメリットはあります。その反面、到着空港のカルーセルで、受け取りを待たなければならないというデメリットも生じます。
PAXとの交渉や説得は、最も大変な要素でもあり、グランドスタッフ業務の面白さを強く感じられる瞬間です。ゲートバゲージを多くチェックインしてもらい、スムーズなボーディング、そしてオンタイムの出発につながった瞬間は、グランドスタッフとして笑顔になれる瞬間でした。