INAD(Inadmissible Passenger)とは

今回はグランドスタッフが遭遇するPAXのうち、ちょっと怖いPAXについてです。

INAD(Inadmissible Passenger)とは

Inadmissibleとは、容認できない、許せないといった意味を持つ単語です。ある国に、入国を拒否されたPAXという意味です。グランドスタッフが良く使う単語です。

イナドやインアドと発音されます。

特に到着担当にとっては、残業要因となってしまうPAXでもあります。国にとっても、航空会社にとっても、そしてそこで働くスタッフにとっても歓迎せざる存在であるのは間違いありませんね。

私が遭遇したINAD

私が到着担当として勤務していると、イミグレーションから連絡が入ります。

担当便のPAXがINADとなり、入国できない状態とのことです。その場でスーパーバイザーに連絡し、対応を確認しました。当該PAXは以前日本で良からぬ行為をしたようです。

このような場合、INADとなったPAX本人が自費でチケットを再購入し、帰国する必要があります。幸いにも、その日の1便目で発生したINADであったため、数時間後の2便目で帰国することが可能でした。

当該PAXにチケットを購入してもらったあと、到着動線から出発動線に誘導します。

INADに対するシートアサインにも配慮が必要で、可能な限り隣のシートはブロックします。

搭乗させるのも基本的には最後です。チーフパーサー(キャビンの責任者)にも、INADである旨、引継ぎが必須です。

以前、何らかの不法行為を行っている人ですので、ちょっと緊張しました。しかし、話し方も穏やかで、この人が?という印象すら抱いてしまいました。

※翌日以降の便に乗る必要がある場合、上禁室と呼ばれる場所で、出発まで滞在することになります。出発を待つ間、ここで過ごす訳ですが、食費はグランドスタッフがPAXから預かり、コンビニ等で調達して、届けに行くわけです。

INADになりそうだった?PAX

到着担当として、LL(Lost&Found)業務に従事していると、ターンテーブルからバゲージが捌けないことがあります。ターンテーブルの傍にはPAXは誰もいないのに、ぽつんとバゲージが取り残されたままなのです。

グランドスタッフのLL(Lost&found)業務1

グランドスタッフのLL(Lost&found)業務2

LL業務は、到着ホールにあるバゲージ返却用のターンテーブル脇に立ち、到着PAXのケアを担当する業務です。当ブログの過去記事でも、LL業務について紹介しています。よろしければお読みください。

では、ターンテーブルにバゲージが残っているのか。

多くの場合、持ち主のPAXがゆっくり歩いていたり、トイレに入っていたりして、ターンテーブルに来るまでに時間を要していることが理由です。

しかし、イミグレーションで別室に呼ばれ、入国審査官から質問を受けている場合もあります。イミグレーションには、審査官がいて多くのPAXが並ぶブースの脇に、事務所があります。すぐに入国許可をもらえないPAXは、この事務所で入国審査官の質問を受け、入国の可否が少し時間をかけて審査されるわけです。

グランドスタッフは、事務所のカウンター脇に置かれたPAXのパスポートのコピーの入ったファイルを手に取ります。自身の担当便のPAXがここで審査を受けていないか、確認するためです。

ここで審査を受けているPAXのパスポートのコピーは、隅の余白の部分にエアラインの2レターコードが書かれ、前述のファイルに入れられます。

ある日私が到着担当として、早朝までの勤務に入っていたとき、ターンテーブルにバゲージが取り残されているのを発見しました。イミグレーション事務所まで行き、パスポートコピーを参照すると、やはりありました。担当便のPAXがまだ審査を受けているようです。

入国審査官に、入国許可が下りそうかどうか見込みを尋ねます。もう少々お待ちくださいと言われ、しばらく待機しました。

15分程経過し、再度尋ねると、入国できそうですとの返答があり、ほっとしました。

まとめ

残業が嫌いな私は、INADになりそうな人がいないか、冷や冷やしていました。INADは怖いというイメージもあり、到着便のPAXが全員無事に入国できた瞬間は、ほっとしました。