グランドスタッフのLL(Lost&found)業務1

今回は、グランドスタッフが担当する業務で最も地味な、LL業務についてお伝えします。

LL業務とは

Lost&Foundの略で、遺失物捜索といった意味です。駅のお忘れ物センターの英語表記も、Lost&Foundですね。

文字通り、行方がわからない、PAXのバゲージを捜索したり、お預かりしたりという業務を担当します。

未着(AHL)

PAXのチェックインバゲージが、到着空港に届かない場合です。届かなかった空港の立場では、AHLと呼びます。

私がLL担当だった頃、未着が発生するのは、乗り継ぎがある場合が多かったです。

発航地の空港には置き去りにされていますので、そのバゲージが残された空港の立場では、OHD(オンハンド)と呼びます。

未着が発生する理由

例えば、以下のような場合です。

DAD(ダナン)-HKG(香港)-HND(羽田)

HKGで一度乗り継ぐパターンです。

DAD-HKGの便が遅れて、HKG-HNDの便にバゲージが登載できない場合などがあります。

また単にHKG-HNDの便でも未着が発生する場合があります。私が経験した例だと、HKGの空港のBHS(手荷物搬送システム)故障や、あまりにも多くのチェックインバゲージがあり、飛行機の登載重量制限を超えてしまい、HKGの空港に留めざるを得なかった例があります。

未着が発生することがシステムを通じて予めわかる場合(Word tracerまたはメール)は、グランドスタッフが、機側や、チェックインバゲージを返却するターンテーブルで、PAXの氏名が書かれたボードを持ち、待機することもあります。

お怒りのPAX

PAXが自分のもとに来ると、まずは丁重に謝罪します。

日本人のPAXの場合、ここからが厄介なことが多いです。怒り出すPAXも多く、「明日職場で配るお土産が入っている。どうしてくれるんだ。」と言われたこともあります。職場でお土産を明日配らないとどうなるんだ?と思いましたが、その言葉はもちろん飲み込みます。

外国人PAXの場合、起こったものは仕方がないといったスタンスの方が多かったです。書類の記入にも淡々と対応してくれる場合が多いです。

未着が発生したら

税関書類(別送品申告書)等を記入して頂きます。また、当該バゲージの色、特徴(持ち手がついているか、スーツケースか、バックパックかなど)を聞き取ります(それらの特徴を記述する、世界共通のコードがあります)。そして、World Tracerで当該バゲージの所在を確認します。前述のDAD-HKG-HNDの場合、HKGの空港に取り残されているケースがほとんどです。

別送品申告書は、バゲージを海外から送ったりして、PAXとは別に移動する際に必要な申告書です。通常は、PAXがチェックインバゲージと一緒に空港到着しますね。未着の場合は後からバゲージが届きますので、この書類が必要となります。

World Tracerでバゲージを追跡すると、どの便でそのバゲージが送られてくるのかわかります(これをフォワード情報といいます)。どの便で来るのかわからない場合は、決定次第、PAXに連絡します。

未着発生の場合、中に何が入っているかPAXに聞くことも重要です。

免税範囲を超えたものが入っている場合、課税対象となります。例えば、760mlのお酒は3本までが免税範囲となっています。

税関 海外旅行者の免税範囲

PAXが仮に4本目のお酒を持っていれば、その1本は課税対象になり、お金を払う必要があります。このような場合、PAXから事前にそのお金をお預かりする必要があります。

最後に、通関に備えて、スーツケースの暗証番号や鍵をお預かりします。海外から帰国すると、税関カウンターで職員から質問を受け、場合によっては荷物の中身を税関職員に見せる必要がありますね。これを、グランドスタッフが代行して行う訳です。

未着バゲージが到着したら

未着となったバゲージは、翌日の同じ会社の便か、もしくは他エアラインとアグリーメント(契約)があれば、その会社の便でもフォワード(こちらの空港に輸送する)することができます。グランドスタッフは、当該バゲージがフォワードされる便が到着する際にカルーセルに行き、バゲージを受け取ります。

ちなみにフォワードされるバゲージには、「Rush tag」というものがアタッチされています。

通常チェックインバゲージは、PAXと同じ行程をたどることが航空保安上でも大前提です。

理由があって、バゲージだけをその便に搭載する場合、その事実を分かりやすくするためと、セキュリティ上の問題だと聞きました。

あとは通関し、PAXに宅配で送って終了です。

その他のLL対応が必要なケース

自分の勤務空港でバゲージを載せられないケースが発生した場合の扱いについては、長くなりましたので、また別記事でお伝えします。

例えば、以下のような場合です。

MNL(マニラ)-HND(羽田)-SFO(サンフランシスコ)

MNL-HND便の到着担当だった場合の対処法ですね。

LL業務には、pilferageやダメージといった対応もあります。

pilferageは、チェックインバゲージの中から、何かを盗み出されたといった場合です。

(私は経験したことがありません。)

ダメージについても、次回以降でお話ししたいと思います。