プライベート機・チャーター機ハンドリングの難しさ

今回まで数回に分け、主にプライベート機のハンドリング手順についてお話してきました。

プライベート機(チャーター機も含む)には、チェックインカウンターやBPもありません。

※定期チャーター便やITCチャーターという旅行会社経由でPAXを募集するチャーター機は、ここでは除外します。

定期便担当のグランドスタッフが行う業務よりもシンプルなのでは?と思われた方も多いと思います。

では、プライベート機ハンドリングのハンドリングの難しさはどういった点が挙げられるのか、見ていきたいと思います。

コンテンツ

1.スケジュールが決まっていない(出勤時間が頻繁に変更になる)

前回の記事でもお伝えしましたが、やはりこれが一番だと思います。定期便と異なり、オーナーやチャーター主のリクエストの日時に運航することができるのが、プライベート・チャーター機の一番のメリットです。

定期便が電車、バスだとすれば、特にプライベート機は自家用車に該当する存在だと言えます。

プライベート機ハンドラーは、明日のスケジュールもわからないような生活を送っています。現時点で明日フライトが入っていなくても、突然リクエストが入り、しかも早朝深夜だったりします。

プライベート・チャーター機のハンドリング会社は小規模のところが多いので、必要最小限の人員でハンドリングしている状況が多いと思います。

従って、退勤してから次の出勤まで時間がないということもあります。私が経験したパターンには、19時に退勤し、翌朝2時というものもあります。

極端な場合、翌日は09:00に出勤予定だったのが、朝03:00になったことも。就業時間後、友人と飲む予定があっても、翌朝09:00出勤ならある程度飲むことができます。しかし、03:00なら難しいですね。翌日は予め休みを入れるなど、一工夫が必要となります。

こういった超変則的な勤務にも柔軟に適応できる人が、プライベート・チャーター機のハンドリングに向いています。

プライベート・チャーター機のハンドリング会社に就職・転職する場合、空港の近くに住んだほうが良いのは間違いありません。フライトスケジュールによっては、次の出勤までの時間が極端に短くなります。

公共交通機関を利用できない時間帯の場合、タクシーを出してくれる場合が多いとは思います。しかし、フライトスケジュールがしばしば変化になるため、休息時間の捻出という意味で、私自身の経験から、空港近くへの居住を強くお勧めします。

2.1便1便がカスタムオーダー、ハンドラーはコンシェルジュ

プライベート・チャーター機のハンドラーは、言わばコンシェルジュのような存在です。

定期便であれば、各エアラインにはSOP(標準作業手順)があり、徹底的にルールに則りハンドリングが行われます。

しかしプライベート・チャーター機の場合、運航日時から始まり、ケータリング、送迎車両といったリクエストも、全てオーナー・チャーター主の意向で、全てがカスタムメイドです。

ケータリング会社は、プライベート・チャーター機用のメニューを用意しているところが多く、予算に応じて柔軟な対応をしてくれます。

しかしそれでは満足しない方々も当然おり、有名レストランで注文し、ピックアップに行くこともあります。ピックアップするのは当然、ハンドラーです。私もハンドラー時代、都内の有名店にケータリングをピックアップしに行ったことが何度かあります。

ケータリングは電車では持ち帰れないような量になることも多いので、帰りはタクシーになります。ケータリングの額も高額ですが、更にタクシー代もかかるので、定期便の機内食とは全く次元が違うことに、とても驚いた記憶があります。

あらゆるリクエストに臨機応変に対応できる能力が求められます。一便毎にサービスが異なるため、ハンドリング前には、オーダーしているサービス内容について、再度の確認が必須です。

私は定期便のハンドリングから航空業界に入ったので、カスタムメイドのプライベート・チャーター機のハンドリングに、最初はとても戸惑いました。

しかし、それに対応してくれるグラハン会社、ケータリング会社、レストランといった関係先(サードパーティー)は必ずあります。

プライベート・チャーター機のハンドリングでは、お客さまのリクエストを適切に処理してくれるサードパーティーを選択し、お客さまのリクエストを的確に伝える能力が非常に大切です。求められる能力は、まさにホテルのコンシェルジュと言っても差し支えないと思います。

まとめ

航空機のハンドリングという点では、プライベート・チャーター機も、定期便と本質的には同じです。今回は、異なる点にフォーカスしてお伝えしました。

プライベート・チャーター機というと皆さんが連想するのは、VIPというイメージだと思います。まさしくその通りで、一般の労働者階級とは次元の異なる世界がそこにあります。

VIPの方々には気を遣うことも多く、緊張する場面も多いです。やはり私は、どちらかというと定期便のハンドリングの方が、PAXとの距離感、スケジュールが決まっているという点では好きでした。