プライベート機到着業務 後編

前回はフライトの到着直前、グランドハンドリングサービスの準備を整え、スポットでの待機というところまでお話しました。

スポットイン直前

スポットインが近づくと、マーシャリングならびにチョーキングを依頼したグラハン会社のスタッフが、航空機のスポットへの誘導を行います。

プライべ―ト機が使用するスポットは基本的にオープンスポットで、VDGS(Virtual Docking Guidance System)と呼ばれる誘導システムがないため、マーシャラによる誘導が必要となります。

※PBB(ボーディングブリッジ)のあるスポットには、VDGSという誘導システムがあり、基本的にはマーシャラーは不要です。

https://en.wikipedia.org/wiki/Stand_guidance_system

Wikipedia Stand guidance system(Virtual Docking Guidance System)

スポットイン後

マーシャリングによってスポットインしたあと、同じくグラハンスタッフがチョーキングという、チョークを車輪にかませる作業を行います。チョークとは、航空機の車輪止め(木製または金属製)で、航空機が強風で動かないようにするために行います。

PAXのアテンド

エンジンが停止したらPAXドアオープンをし、PAXが降機します。ランプバスをシップに寄せてもらい、PAXをターミナルまでお送りします。

※ランプバスが出発する前に、PAXのバゲージを載せた荷物車を出発させます。これは、バゲージはPAXと別の動線を通って税関検査場に搬入するため、少し時間がかかるためです。PAXにバゲージをスムーズにお渡しするため、バゲージを先出しするのです。

ランプバスにもハンドラーが少なくとも1名乗り込み、PAXのアテンドを行います。このバスの車中で、CIQに再度電話連絡し、PAXがターミナルにあと何分程で到着するかを報告します。

PAXがターミナルに到着したら、定期旅客便のPAXと同様の動線をたどり、検疫、入国審査を済ませます。税関検査場構内で、PAXバゲージを持ったグラハンスタッフとミートし、税関検査を経た後、入国となります。

※今回は定期便PAXも使用する、一般ターミナルでのPAXハンドリングを想定してお伝えしましたが、プライベート・チャーター機のみが使用できる、「BJターミナル」というものも存在します(日本では羽田、成田、関空のみ)。

入国後は、ハンドラーやPAX自身が手配した車両のドライバーに連絡し、乗車される車両までアテンド後、お見送りをして終了となります。

シップ作業

シップでは到着前にオーダーしていた、LAV(トイレ汚水処理)、FUEL(燃料補給)、ケータリング取り卸し(ごみ処理)とったサービスが行われます。

代理店であるハンドラーが行うのは、各種サービスの手配、作業が適切に行われているかのスーパーバイズです。

LAV作業は、CPT(キャプテン)に作業開始許可を取り、作業が完了したらその旨を再度報告します。FUEL作業についても、必ずCPTの許可を取ってから開始します。

ケータリング取り卸しは、アテンダントが乗務していれば、アテンダントがケータリング会社スタッフと協力して行います。そうでなければCPT、FO(副操縦士)が手伝ってくれる場合もあります。

※定期便と違い、アテンダントがいないフライトもプライベート機では珍しくありません。

全てのサービスが終了したら、ハンドラーが車両に乗せて、ターミナルまでアテンドします。出発前に、CIQに連絡し、CREWがターミナルに到着する旨を一報します。

ターミナル到着後は、定期便のクルーと同じ動線を通り、入国します。クルーバゲージは、はハンドラーの車両で搬送することもありますし、グラハン会社の荷物車で運ぶ場合もあります。荷物車の場合、PAXの場合と同じように税関構内に届けてくれます。

ショーパス(乗員上陸許可証)を準備するところも、定期便と同じ流れです。

ショーパス(Shore pass)とは

入国手続きが完了したら、CREW送迎用のタクシー等のドライバーに連絡して車両までアテンドし、お見送りして終了です。

まとめ

今回までは、到着機ハンドリングの流れを詳細にお伝えしました。特に定期便のハンドリングにお詳しい方は、定期便と本質的には手順が同じということを感じられたことと思います。

プライベート・チャーター機は、小型の機体が多いですが、やっていることは基本的に定期便と同じです。私も定期便のハンドリング会社から転職した際、その事実を痛感しました。

プライベート・チャーター機ハンドリング会社の特徴として、対お役所の仕事が多く、書類作成の仕事が非常に多いという特徴があります。

そして、PAXとの関わりは非常に薄く、B to Bの性質が非常に強いです。直接やりとりをするお客様は、現地運航支援会社、ハンドリング会社のスタッフとなり、グランドスタッフと比較してPAXと直に接する機会は非常に少ないと言えます。興味のある方は、そういった点も考慮して就職、転職に活かしていただければと思います。

しかし、本質的な航空機のハンドリング手順は同じですので、飛行機好きの方には非常に醍醐味のある業務だと思います。