昨今、コロナウイルス蔓延による旅客需要の激減に伴い、世界各国のエアラインが経営破綻し、民事再生や更生手続きによって、会社再建を目指すか、または完全に倒産という動きが続いています。
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タイ国際航空も経営破綻
タイのフラッグシップキャリアである、タイ国際航空も経営破綻に至りました。
しかし、経営破綻後も会社更生手続きによって、再建を目指すそうで、運航も継続するそうです。会社が倒産というと、その会社自体が消滅し、当然事業も継続することができなくなります。しかし、民事再生や更生といった手段も残されており、経営破綻しても事業存続する道自体は残されているのです。
会社更生と民事再生
会社更生と民事再生とは、簡単に言うと、経営破綻状態の会社を倒産させることなく、会社の再建を目指す手続きです。
会社更生はこれまで業務を行っていた経営陣が全て退陣する必要があるが、民事再生は退陣の必要がないという違いがあります。その他、複数の相違点がありますが、会社更生はほとんどの場合、大企業を対象としたもので手続きも相当複雑、民事再生は中小企業も適用可で、手続きは会社更生と比較すれば簡易と把握しておけば、大丈夫だと思います。
ちなみに、JALが経営破綻時に行ったのは、会社更生手続きだそうです。
しかし、いずれにしても今後の資金を注入してくれる、「スポンサー」の存在が必要となるそうです。
JALの場合は、これが国だったということですね。
コロナウイルス感染拡大や蔓延によって、倒産する会社が増えているそうです。この場合、小規模な企業でも民事再生を申請して、事業の継続を目指せばよいのかと安易に考えてしまう可能性もありますが、その会社を再生させるだけの意義や価値がないと、民事再生は不可です。だから、経営破綻してそのまま倒産する会社が非常に多いのですね。
倒産ではなく、会社更生や民亊再生で得られるもの(エアラインの場合)は?
会社更生であれば、経営陣は退陣する必要があるものの、従業員はそのまま残ることもできます。とはいっても、経営の合理化を目指すために、リストラはほとんどの場合で必須となるようです。
これらの事実から考えると、倒産であれば運航は継続できなくなり、従業員の雇用も当然維持できなくなります。しかし、会社更生や民亊再生だと、部分的に(場合によってはかなりの部分でしょうが…)リストラする必要もあるものの、雇用をある程度維持できます。よって、会社内で受け継がれてきた、ノウハウの継承も可能となるでしょう。
これが倒産となると、スタッフは全員解雇となります。そして、リースしている機体または自社保有の機体はすべて手放すこととなり、運航していた路線に関わる許可も当然、消滅してしまいます。それまで、その会社が運航していた路線も消滅してしまいますので、社会的影響が非常に大きいと考えられます。
そして、そのエアラインの業務を受託していた会社にとっても、ハンドリング自体が消滅してしまいますので、経営や雇用にも重大な影響を与えるでしょう。
日本の場合、JALやANAといったキャリアに真っ先に公金が投入されることとなると思います。これに対して、不公平だという声が上がると思います。しかし、この2社は国内線・国際線の両方で運航している路線も非常に多く、倒産となった場合の社会的影響を考慮し、倒産させないで事業再建を目指すメリットの方が上回るということでしょう。
日本のその他のエアラインを見てみると、JALやANAと比較して保有路線数も少なく、平たく言えば影響が少ないから、会社更生や民事再生が適用になりにくいと言えるのかもしれません。そして、最も需要なのは事業再建に協力してくれるスポンサーですね。
まとめ
エアラインの経営破綻は、エアラインのみならず各ハンドリング会社にも大きな影響を与えることは間違いありません。外国エアラインのハンドリングを行う会社も日本に多数存在しますので、外国エアラインの経営破綻が日本の航空業界に与える影響も、非常に大きくなる可能性があります。
しかも、会社更生手続きを受けている会社では、経営陣の交代で方針が変わり、よりハンドリング料金が安い会社にハンドリングを移管する可能性も十分にあると、私は考えています。平時でも、ハンドリング会社間での競争が非常に厳しいですので、会社自体が消滅しないからといって、ハンドリング会社が変わらないという保証は、どこにもありません。
この状況の根本的回復には、旅客需要の回復を待つしか方法がないでしょう。世界的に見ても、感染者は減少傾向にあります。一刻も早く、「春」が訪れることを願います。