旅客機による貨物輸送3(アビアンカ航空の例)

昨今、コロナウイルス感染拡大による旅客輸送の急減で、旅客機による貨物輸送が急増しています。旅客機を貨物輸送に転用しても、輸送できる量は少ないのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、B777といった大型機では、貨物室の最大搭載量はかなりの量になります。

当ブログの先日の記事では、JALが運航するB777の貨物室最大搭載量と、貨物機としては小型のB737のそれを比較してみましたので、よろしければ以下の記事をご一読ください。

当ブログの記事でも先日、旅客機による貨物輸送についてお伝えしました。搭乗するPAXが激減しているため、貨物室のみではなく、キャビンにも貨物(...

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南米コロンビアのエアラインが成田に

私がいつものようにフライトレーダーを見ていると、見慣れないエアラインが成田に到着するのが見えました。

なんと、コロンビアのフラッグシップキャリアである、アビアンカ航空です。エアカナダやユナイテッド航空も、PVGからNRT経由で、医療物資(マスク、防護服等)を本国に輸送していますので、同様のオペレーションかと考えました。

※これら3枚の画像はいずれもFlightradar24より転載しました。

運航ルートはPVG(上海浦東)ーNRT(成田)ーLAX(ロサンゼルス)ーBOG(ボゴタ)です。是非見てみたいところではありますが、緊急事態宣言下なのでそれは叶いません。

「アビアンカ 成田」で調べてみると、ニュースサイトのソースは見当たらなかったものの、youtubeチャンネル、Narita Aviation Japan様がこの様子を撮影された動画を配信されていました。やはり、旅客便ではなく医療物資輸送用とのことでした。

使用機材自体は、B787-8(B788)で、珍しいものではありませんが、日本に飛来しているエアラインはアエロメヒコのみですので、レアシーンですね。

アビアンカ航空を取り巻く状況

中国とコロンビアを往復し、医療物資を輸送するという重要なミッションに従事するアビアンカ航空ですが、同社の経営は破綻しており、破綻申請をしたとのこと。

【サンパウロ=外山尚之】中南米を代表する航空会社であるコロンビアのアビアンカホールディングスは10日、ニューヨークの連邦破産裁判所にチャプター11(連邦破産法第11条)を申請したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で収入が急減する中、コロンビア政府に支援を求めたが、合意できなかったという。今後、リストラによる再建を...

コロンビア政府に支援を求めるも、断られたとのこと。経営破綻とそれに伴う、今後の経営再建という、同社としても緊急事態に直面しています。このような状況で、極めて社会的意義の大きいフライトを運航している同社の、安全運航を願います。

コロンビア政府としても、コロナウイルス自体の対応に追われていて、エアラインを救済する余裕はないのでしょう。日本においても国の借金が増える一方ですので、救済できるエアラインは数社(ANA、JAL)のみである可能性は否定できませんね。

NRTを経由する理由は?

ところで、アビアンカ航空便はPVGからBOGに到達するまで、なぜNRTとLAXを経由するのでしょうか。答えをお伝えしてまうと、燃料補給のためのテクニカルランディングです。理由は貨物を(おそらく)満載していることと、機体自体の航続距離にあります。

まずは、この機体(B788)の航続距離を見てみましょう。

上記リンク先のデータより、B788の航続距離は14,800kmとわかります。しかし、これは何も載せていない状態での最大航続距離ですので、貨物室を満載の状態では当然航続距離は短くなります。

GoogleでPVGからBOGの距離を計算してみると、15,678 kmでした。単純に考えれば、機体の性能上はPVGから少なくともLAXまで直行することは可能です。NRTとLAXに寄港する目的はテクニカルランディング(燃料補給目的の寄港)と考えて間違いないので、この事実から考えても、同便の貨物室は満載状態だと考えられます。

北米方面に向かう純粋な貨物機は、搭載重量の関係でANC(アンカレッジ)にテクランする便が多いです。

テクニカルランディングについては、当ブログの過去記事もご参照ください。

今回は、テクニカルランディングについてのお話です。 テクニカルランディング(以下テクランとします)とは? 給油目的で、目的地の途中の空港...

しかし、2回もテクランするというのは、大変なフライトですね。時間がかかりますが、PAXが搭乗していないだけ、まだ気は楽かと思ってしまいました。PAXとしては、2回もテクランするフライトは乗りたくありませんw

まとめ

世界各国のエアラインは大変な状況の中、社会的に非常に意義の高い、医療物資の輸送オペレーションを実施しています。自社の置かれた厳しい状況の中での運航ですが、どうか各社とも安全運航が続くことを、強く願っています。

緊急事態宣言が解除され、世界の航空旅客輸送の需要が元のレベルに一刻も早く戻って欲しいですね。当ブログの話題についても、どうしてもコロナの影響を受けてしまいます。旅客需要が著しく回復しているという、明るい話題を皆さんに共有できる日が早く来ますように。