グランドハンドリング業務(1)

今回はグランドハンドリング業務についてです。

空港には、グランドスタッフとして旅客業務に関わるという選択肢の他にも、様々な方法で飛行機に関わることができます。

グランドスタッフとして旅客業務を行う中でも、深く関わりがある人たちです。

グランドハンドリングとは

以下のような作業を、グランドハンドリングと呼びます(他にもありますが、一例です。)

グランドハンドリングという用語は、航空機地上支援業務を指す、幅広い意味を持つ用語です。グランドスタッフも、広義のグランドハンドリングと呼べますが、一般的には以下のような作業を担当するスタッフを指すことが多いです。

カウンターでチェックインした手荷物の、コンテナへの搭載

カウンターでチェックインした手荷o物の機体への搭載

駐機している飛行機のトーイング(専用車両で引っ張り、他の駐機スポットへ移動する)

航空貨物の機体への搭載

トイレの汚水処理

機内の飲料水の補充

飛行機が出発する際のプッシュバック作業(飛行機はバックできないため、専用の車両を機体に接続して、後ろに押す作業を行います。)

機体への給油作業

機内食の機体への搭載(ケータリング)

機内清掃

デルタ航空機のケータリング対応を行う、TFK社の車両。

パッセンジャーステップと呼ばれる、PAXが機体に乗り込むための階段。

ケータリングトラック、手荷物や貨物を搭載するコンテナ、航空燃料を入れるためのフュエラ―が作業中。

グランドスタッフと関わりが深いグランドハンドリング業務

グランドスタッフは飛行機の上回り(旅客、客室)のことを担当しますが、グランドハンドリング(グラハン、ランプとも呼びます。)スタッフは、飛行機の下回りのことを担当します。

では、グランドスタッフとグラハンさんのやりとりを見てみましょう。

カウンターで

PAXの荷物をチェックインしたグランドスタッフは、チェックインカウンターから荷物を、BHS(Baggage Handling System)と呼ばれるシステムで、グラハンさんが待機するソーティング場というエリアに運びます。

ソーティングとは、並び替えや分類といった意味を持つ単語ですね。文字通り、様々なカウンターから流れて来た荷物を、便ごとに仕分ける、要は荷物の仕分け場です。

カウンターからソーティング場に到達するまでには、複雑な経路があります。その途中でX線を照射して、危険なものではないか確認を行います。ここで引っかかると、ゲートでPAXを呼び出し、開披検査と呼ばれる荷物検査を再度行う必要があります。

グラハンさんは、ソーティング場に流れてきたバゲージをコンテナに積み込み、ドーリーという車両で機側(文字通り、機体の側という意味です。)まで運びます。

ドーリー

ドーリー

バゲージをこのようなコンテナに積み込み、機側まで運びます。 自動運転もできてしまうとは、驚きです。

カウンターから流せない大きいバゲージももちろんあり、そういったものは、「長大 ちょうだい」と呼ばれる長尺手荷物検査場がカウンター側にあり、そこからソーティング場に流します。

長大から流すものは以下のようなものです。

サーフボード

スキーの板

スノーボード

楽器

長大でも、X線検査を行って安全性をチェックした上で、ソーティング場に運ばれます。

しかしただ待っているだけでは、グラハンさんは機側に荷物を持っていってはくれません。

カウンターからグラハンさんへ一報

ここで、ソーティング場にいるグラハンさんへ以下のように無線で一報します。

「××(エアラインの2レターコード、場合によっては便名も)カウンターより、ソーティングさん、只今長大よりお荷物×点(個数)流しておりますので、ピックアップ願います。」

こうすることで、ソーティングさんは当該荷物のピックアップをしてくれます。

ゲートで

チェックインが終わり、グランドスタッフはゲートに向かいます。

そこで、グラハンさんがゲート旅客(グランドスタッフ)を無線で呼びます。

「ソーティングより、ゲート旅客さん。只今ゲート開披のお鞄×点、エレベーター下に搬入しております。ピックアップ願います。」

チェックインバゲージがソーティング場に行くまでに行われたx線検査で問題が見つかると、当該の荷物をグラハンさんがゲートまで持って来てくれます。ここで言うエレベーターとは、PBB(ボーディングブリッジ)近くにある、飛行機の近くまで下りられる、地上スタッフ用のエレベーターを指します。

出発間際に

ボーディングも順調に進み、未搭乗のPAXは残すところあと数名となります。

そして残りの1名になりますが、一向にゲートにSHOW UPしません。

当該PAXは、バゲージをチェックインしています。

ここでゲート旅客スタッフから、荷物の搭載責任者であるL/M(ロードマスター)に、一報します。

「××(エアラインの2レターコード)ゲートよりロードマスターさん、お鞄の捜索をお願いいたします。タグナンバーをお伝えしてもよろしいでしょうか。」

ここでゲート旅客担当は、ロードマスターに、当該バゲージのタグナンバーと個数を伝えます。また、大型機ではコンテナごとバゲージを機体に積み込むため、コンテナを積み込んだ貨物室内区画番号も伝えます。(3R、4Lなど。RはRight、LはLeftの略してです。)

私の担当便はA320やA321といった小さな機体でしたので、バゲージは貨物室内にバラ積み(バゲージの入ったコンテナごと積み込むのではなく、重い荷物は下、軽い荷物は上といった形で、貨物室内に直接荷物を積み上げて搭載します。貨物室内に荷物の山を築くイメージです。)でした。

バラ積みの機材でバゲージを捜索する場合、グラハンさんは荷物の山をかき分けて当該バゲージを探すことになります。下の方にあるバゲージを特定するのは、本当に大変な作業だと思います。

結局最後のPAXも無事ゲートに到着し、バゲージ捜索は中止となり、オンタイムでパッセンジャードアクローズ(PAXが乗降するドアを閉めること)ができました。

まとめ

グランドスタッフの旅客業務は、グラハンさんの協力なしでは絶対に行うことができません。

グラハンさんが行っている業務について、想像力を働かせることが、スムーズな業務には不可欠だと思います。

フライトをオンタイムで出発させるためには、グランドスタッフ、グラハンといった異なる職種の協力が不可欠です。

多職種のスタッフへの敬意と思いやりを持ち、一致協力してフライトをハンドリングすることが大切ですね。