グランドスタッフとしてフランス語を活用する方法 後編

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前回の記事では、グランドスタッフとしてフランス語を活用する求人の探し方、求められるフランス語力といってトピックについてお伝えしました。よろしければ、以下の記事をご一読ください。

グランドスタッフと語学について、フランス語編 前編をお送りします。正直、フランス語圏のキャリアの日本への就航は少なく、活かす機会が多いとは決...

今回は、フランス語を活かせる現場で働いてみた私自身の経験について。そしてフランス語圏ではないキャリアでも、フランス語を活かそうとしてみた、私の試みについてです。

因みに私は大学でフランス語学を専攻し、仏検2級を所持しています(もう少し勉強して、仏検準1級を取得しておけばよかったと思っていますが…)。

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某フランス語圏キャリアのカウンターでの通訳業務の依頼が

私は旅客グランドスタッフして入社した会社を退職し、プライベート・チャーター機ハンドリング会社に転職するまで、少し時間がありました。そんなとき、グランドスタッフとして勤務していた会社の上司の紹介で、某フランス語圏キャリアのカウンター・ゲートの通訳業務をすることになりました。

とはいっても、いつも担当しているスタッフではどうしても足りない日があるということで、数回のヘルプ程度でした。業務に備え、フランス語のアナウンス台本等のデータをエアライから受け取ります。

業務内容は、カウンター・ゲートでの通訳、アナウンス。そして到着便のクルーケアでした。本番に備えてアナウンス台本を音読する練習をしたり、空港カウンターやゲートで使われる頻度が高い表現をポケットに入る小さなノートに書きだしてみたりと、入念に準備を行って当日に備えました。

いよいよフランス語通訳の本番(OJT)

こうして本番の日を迎えました。初日はOJTで、先輩の通訳スタッフと一緒に業務を把握します。しかしOJTといっても、業務自体がヘルプということもあり、わずか1回だけでした。

担当となったのは、フランス国籍のスタッフでした。フランス人と日本人のご両親の元に生まれた方で、日本育ち。フランス語は25歳から始めたとのことで、私の方がフランス国籍の方よりもフランス語を始めた年齢が早いという不思議な状況でしたw

まずは到着便のシップサイドでスタンバイし、クルーの降機を待ちます。長時間乗務して疲れているクルーには、笑顔で挨拶します。そして、入国手続きを経てクルーバスへ誘導。全員が揃っていることを確認し、お見送りして終了です。

クルーケアが終了すると、出発のカウンターへ。この日は、カウンターのチェックイン担当の通訳を1件したのみで、あとはフランス語業務はアナウンスのみでした。出発1時間前にはゲートに向かい、ゲートでもアナウンス業務を担当します。

OJT初日はアナウンスと細々とした問い合わせ対応だけで、何事もなく終了しました。

その後のフランス語通訳業務でのクレーム対応

OJTではイレギュラーに遭遇せず、無事に終わるということはよくあります。その後1人立ちすると、次から次へとイレギュラーが発生することが多いのが謎ですね。

このときの通訳業務でも同じで、一人で業務を始めてからイレギュラーが起こります。

この日はカウンターでチェックインしているスタッフから呼ばれ、現場に行ってみると、お怒りのPAXが。フランス語で不満を伝えてきます。本国のカスタマーサポートと、カウンターのスタッフが言っていることが違うとのこと。

確認してみると、間違えているのは本国のカスタマーサポートの方でした。帰国されてから本国のカスタマーサポートにこの件を伝えて欲しいとお願いし、その場は収まりました。

この件が収まったかと思えば、また別のスタッフから通訳の依頼が入ります。席が隣同士でないことに不満を抱いた、2人連れのPAX。その日は満席で、ご希望に沿えませんと伝え、お引き取り願います。

しかし、搭乗ゲートでも再びこのPAXから問い合わせがあり、隣通しにできないかと聞いてきます。私も内心怒り気味で、できない旨をお伝えして再度お引き取り頂きました。この日はフランス語でのクレーム受付、対応ばかりでした。

エアラインのフランス語通訳業務をして感じたこと

フランス語圏の方でも、多くの方が程度の差こそあれ、英語を理解してくれます。チェックインカウンターで、チェックインバゲージの有無、座席は窓側か通路側か、ゲートは何番といった簡単な事項を伝えるぐらいなら、大半のPAXは問題ないはずです。

しかし、それでもフランス語で伝えたいという場合は、クレームか複雑な事項であることが多いのです。ヒートアップしていて、苦手な英語が出てこない。あることを伝えたいが、英語ではどう伝えていいかわからない。

このような、PAXにとっては不満を抱えている、またはもどかしいという状況に直面し、解決に導く手助けをすることが求められます。通訳といっても、何かしらの問題を抱えているPAXの対応の矢面に立たされることが多かったという印象でした。偶々タイミングが悪かったのかもしれませんが、場合によってはクレームの現場からまた別のクレームの現場へというパターンに当たってしまいました。

フランス語能力を活かせる、といっても気持ちは少し複雑な思いもありました。しかし、多くのフランス語話者のPAXと会うことができ、フランスにいるような疑似体験ができたのは、非常に楽しかったです。

非フランス語圏キャリアでフランス語を活かす方法

私自身がグランドスタッフだった頃は、フランス語圏のキャリアをハンドリングしていた訳ではありません。しかし、フランス語圏の国籍のPAXは各便に数名は搭乗されることが多く、フランス語を使う機会はありました。

グランドスタッフはチェックイン業務で、各PAXのパスポートを必ず拝見します。その時に国籍が確認できるのが、グランドスタッフのメリットですねw

そうした機会を利用し、私はフランス語でチェックインや関連する案内をしたりしていました。PAXも喜んでくれますし、こちらにとっては勉強にもなり、メリットが大きいです。

担当キャリアが非フランス語圏の会社であっても悲観せず、そうしたチャンスを存分に活かすことを是非お勧めします。

こうして、少ないながらも着実にフランス語を使用するチャンスを積み重ね、フランス語能力を磨く。そしてフランス語を活かせる求人が出るチャンスを狙うという方法があります。

まとめ

グランドスタッフとしてフランス語を活かせるチャンスは、決して多いとは言えないものの、確実に存在します。

現在学生の方は、時間のあるうちにフランス語力を高め、仏検にも挑戦されるといいと思います。そして、社会人でフランス語を活かしてグランドスタッフに転職されたい方は、なかなか時間を作ることが難しい方も多いと思いますが、出来る範囲で時間を作り、フランス語を力を地道に向上させることをおススメします。