台風の晩の飛行機番

プライベート・チャーター機ハンドラーは航空機版のコンシェルジュと言っても良く、運航に関わることなら何でもこなします。

こんなことまでやるの?と思うこともあるのですが、そこは仕方がありません。定期便のハンドリングのように、役割分担がきちんと分かれていません。その点を面白いと思えるか、辛いと思うかは人それぞれだと思います。

今回お話しする出来事は、明らかにこんなことまでやるのという方に分類できます。

台風が迫るある日、私に命じられた任務は?

まだまだ暑さも残る9月中旬のある日、数日後に大型の台風が東京を直撃する予報が出されました。中国のオーナーが所有していた機体が台風が直撃予定の日、駐機予定でした。私も丁度その日、勤務を予定していました。

この機体というのが、プライベート機の中でも小型の部類に入る機体でした。最大離陸重量(MTOW)も軽く、もしや台風による強風で動いてしまう可能性があるのではないかという話を、その上司としていたのです。

そこで台風が最接近する日の夜から、その機体が駐機しているスポットのそばにハンドリング用の車両で行き、雨風が収まるまで、機体が動かないかどうか見張っていてほしいというものでした。

最大離陸重量(MTOW)とは?

最大離陸重量(maximum take-off weight)

航空機の機種ごとに定められたその航空機の離陸時にとり得る重量の最大値。航空機メーカーは,その航空機が最大離陸重量で,離陸・上昇性能,安定性,操縦性,機体強度などの要求条件を満足していることを証明しなければならない。たとえば747-400の最大離陸重量は,機番によって異なるが,国際線用の850,000lb(約385t),国内線用の600,000lb(約272t)などとなっている。

JAL 航空実用辞典 最大離陸重量

例えばB747-400という国際線仕様の機材であれば、約385tとのことです。簡単に言えば、この数字が大きいほど、多くのPAXや貨物を搭載して離陸することができるわけです。

私が担当した機体は、Bombardier challenger 605という機体です。

Staying Ahead of Competition is a Habit for The Bombardier Challenger 605

MTOWはというと、約100tで上記のB747-400と比較してもほぼ4分の1ですね。航続距離は7,491キロとなっています。東京からホノルルまでは余裕ですが、サンフランシスコといった西海岸の都市には届かない距離です。

飛行機番を命じられることになる1週間ほど前、HKGを台風が直撃し、駐機中の航空機が破損するという事象が発生していたため(特に重量の軽いプライベート機が)、航空機をお預かりしている代理店として、一応のことはしようと決定されたのです。

飛行機番の夜

いよいよ飛行機番の夜となりました。私は20:00から勤務を開始しました。深夜2時頃から風雨が激しくなるという予報でしたので、翌朝までの勤務となりました。他の便の調整作業はしなくていいから、とにかく飛行機の見張り番に徹してほしいという業務命令が出ました。

日付が変わると風雨が徐々に強くなり、私はコンビニで飲み物と軽食を買い、ハンドリング用車両に乗り込みます。会社の事務所近くのゲートから、ランプ内に入ります。当該の機体が駐機しているスポットの脇に駐車し、見張りを開始します。機体にかませてあるチョーク(車輪止め)をもう一度確認し、車内でスタンバイを開始です。

予報通りに2時頃になると風雨が激しくなり始め、乗っている車がガンガン揺れます。風の轟音もすさまじく、窓ガラスに叩きつけられる雨も尋常ではありません。まさか機体が動き出すのではとヒヤヒヤしながら見守ります。白と赤の塗装の機体を食い入るように見張り、風雨が収まる時を待ちました。

3時30ぐらいになると、無事風雨が収まりました。気象予報をもう一度チェックし、今後これ以上風雨が強くなることはないと判断、事務所に帰りました。そこで無事任務完了です。

まとめ

明け方の4時に退勤したものの、普段と違って徒歩で通勤したため、帰りが面倒でした。自転車では10分なのに、徒歩では20分あまり。風もまだ多少吹く中、「朝帰り」はだるかったです。しかし帰宅してシャワーを浴びた後、妙な達成感に包まれたのを覚えています。ハイボールを1本飲んだ後は、爆睡でした。

プライベート機の代理店としては正しい判断だったとは思いますが、こんなことまで?というちょっと過酷な任務の思い出でした。