患者搬送便(航空法130条の2に基づく)

患者搬送便とは?

患者搬送便はMEDIVAC(Medical Evacuation)とも呼ばれ、航空法第130条の2に規定される、チャーター機の一種です。

航空法の関連条文

航空法には以下のような定めがあり、外国籍航空機による、日本国内での運航を規制しています。

簡単に説明すると、航空法第127条は外国籍航空機の日本国内区間のみの運航を原則禁止したものです。

航空法第130条は、外国籍航空機を使用した国内区間のみの有償運航を禁じたのもです。例えば、外国の航空会社による、HND-FUK間の定期便は存在しません。これは国内産業の保護のための、カボタージュ規制と呼ばれるものです。

航空法第130条の2については、日本に発着する便の有償運航(チャーター便)をするには、許可が必要ですよという条文です。

(外国航空機の国内使用)
第百二十七条 外国の国籍を有する航空機(外国人国際航空運送事業者の当該事業の用に供する航空機及び第百三十条の二の許可を受けた者の当該運送の用に供する航空機を除く。)は、本邦内の各地間において航空の用に供してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

(外国人国内航空運送の禁止)

第百三十条 第百二十七条但書の許可に係る航空機、外国人国際航空運送事業者の当該事業の用に供する航空機又は次条の許可を受けた者の当該運送の用に供する航空機は、有償で本邦内の各地間において発着する旅客又は貨物の運送の用に供してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。
(本邦内で発着する旅客等の運送)

第百三十条の二 外国の国籍を有する航空機(外国人国際航空運送事業者の当該事業の用に供する航空機を除く。)は、第百二十六条第一項第一号の航行(これと接続して行う本邦内の各地間における航行を含む。)により本邦内に到着する旅客若しくは貨物の有償の運送をし、又は同項第二号の航行(これと接続して行う本邦内の各地間における航行を含む。)により本邦内から発する旅客若しくは貨物の有償の運送をする場合には、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

航空法第127条・航空法第130条・航空法大130条の2

患者搬送便の運航許可申請

患者搬送便とは、海外において急な傷病に見舞われた人が、母国に戻るために手配する、チャーター便です。海外から日本に運航する場合は、前述の航空法第130条の2で規定される、チャーター申請をする必要があります。

ちなみにこの申請は、原則運航の3日前(最初の空港を出発する3日前)までに申請を行う飛必要がありますが、緊急の場合は24時間前まで申請が可能です。

https://www.mlit.go.jp/common/001322280.pdf

ハンドリング準備

患者搬送便のハンドリングリクエストは、保険会社を通じて入ってきます。海外旅行に出発する際、海外旅行保険に加入する方がほとんどかと思われれます。こうした際、保険が威力を発揮しますね。

海外で旅行中の方がケガや急病に遭うと、ひとまず現地の病院で治療が行われます。そして、容体が搬送に耐えられる状態であると判断されると、保険会社経由で、ハンドリングの打診があります。

リクエストを受けると、まずは発着空港でスロット・スポットの確保を行います。その後、前述の航空法第130条の2に基づく申請を行います。

患者搬送便に特有の事項

患者搬送便は、言うまでもなく患者さんが搭乗しているので、通常の航空便とは異なる手配が求められます。それには、以下のようなものがあります。

  • GPU(スポットインしている間、搭載されている医療機器を使用するため。)
  • 出発前後のCAB(航空局)消防車手配(患者さんは思うように動けない場合が多く、緊急事態に備えるため。)
  • 機側通関(緊急搬送という特別な事情があるため、税関に機側に来てもらい、通関手続きを実施するため。入管についても、ハンドラーが患者さんや付き添いのご家族のパスポートをお預かりし、ターミナルの入管で入国、出国手続きを行う)
  • 民間の救急車手配(患者搬送機から救急車に移乗し、病院に搬送するため)

以上のようなことが挙げられます。その他、救急車はランプ内まで入るため、救急車の乗務員のビジターパス手配(臨時のランプパス)も必要となります。

そして、救急車がランプエリアから出入場するゲートの使用許可についても、事前に得ておく必要があります。

まとめ

ハンドラーとしては、海外で災難に遭遇された方々を、無事病院まで送り届けるためのお手伝いができればという気持ちでハンドリングしていました。

患者搬送便については、2020年3月29日にフィリピン・マニラ空港で発生した墜落事故について、元ハンドラーの立場から取り上げています。

今回は、以下の患者搬送便事故のニュースについてです。 事故の概要 【マニラ時事】フィリピンの航空当局によると、29日午後8時(日本時...

よろしければご一読ください。

患者搬送便は、保険会社やCAB、CIQといった関係官庁、民間救急といった、様々な箇所との細かい調整を繰り返す、本当に地道な作業です。しかし、社会的使命は極めて大きいと、私は考えています。

※アイキャッチ画像は、無料画像のPixabay(https://pixabay.com/ja/)からお借りしました。