今回は私が経験した、機体の輸入立ち合い業務についてのお話です。
とある商社からの連絡
10月のある日、とある航空機の機体を輸入している会社から、私の勤務していたプライベート・チャーター機ハンドリング会社に連絡が入りました。
その会社はアメリカから機体の輸入を予定していてるとのこと。
飛行ルートはアメリカ本土のある空港を出発し、ANC(アンカレッジ)→PKC(ロシアのペトロパブロフスク)→NGO(天候等によってCTS(新千歳)に降りるかも?)というプランでした。
プライベート・チャーター機ハンドラーはどのようなサービスを手配するのか
さて、このような場合、機体の輸入業務を直接行うのは、あくまでも商社です。それでは、航空機運航支援を行うハンドラー側としては、どのようなサービスを手配する必要があるのでしょうか。
それは、以下のものです。
- マーシャリング、チョーキング、LAV手配。
- 到着空港でのCIQへの通報
- 顧客である商社への運航情報提供
それでは、各サービスの項目について見ていきましょう。
1.マーシャリング、チョーキング、LAV手配
これは、他のプライベート・チャーター機到着場面と全く同じ業務です。プライベート・チャーター機は、多くの場合オープンスポットに駐機します。そのため、マーシャリングや機体がスポットインした後、車輪にチョークをかませ、機体が動かないようにします。
これらの作業については、過去の記事で詳しくご紹介していますので、ご覧ください。
2.到着空港でのCIQへの通報
航空機が現地空港を出発すると、MVTという情報が記されたメールが届きます。これには、ETAやCREW、BAGGAGE個数などの情報が記載されています。これを基に、到着空港において、CIQさんへ到着時間を通報したり、GDといった必要書類を配布します。
上記記事で、MVTの具体例とその読み方を記載しています。
3.顧客である商社への運航情報提供
さきほどのMVTに基づき、商社の担当者の方へ到着時間を報告します。到着が迫ったら、シップサイドにて待機して頂きます。
機体が到着したら行うこと(外航機から内航機への変更)
機体が無事スポットインすると、グラハンさんがチョークをかませ、乗員が降機します。ここでは、税関さんもスポットに来ます。
航空機の輸入に際し、必ず必要なのが、内変(ないへん)と呼ばれる作業です。
航空機には外航機と内航機という種類があります。
内航機:日本国内のみで使用される航空機
外航機:日本と海外を往復する航空機(使用する航空燃料には税金が不要)
これは海外旅行時に、私たちが辿る動線を例に取るとわかりやすいかと思います。海外旅行から帰ると、税関のカウンターを通り、「通関作業」を行います。海外から持ち込んだ物品に対して、免税の範囲を超えていれば申告し、税金を納めます。もちろん、範囲を超えていなければ申告のみで終わるケースが多いですね。これは、モノを輸入する作業となります。
これと同じように、航空機についても同じような輸入作業が必要となります。機体に入っているものは全てチェックし、違法なものがないかも厳しくチェックされます。
小さなものしか入らないようなスペースも、税関さんはものすごく厳格にチェックしていたのには、驚きました。
航空燃料については、外航機については税金が不要ですが、内航機の使用燃料は課税対象です。機体に搭載されている燃料を少し取り出し、その質を測定します。
そして搭載されている燃料の量についても測定し、その燃料を輸入するという扱いをします。
ここでの作業をまとめると、税関さんが、機体に搭載されている、航空燃料を含めたあらゆる物品を把握し、税金を計算します。そして、その税金を納税し事務手続きが終了すれば、内変作業は終了となります。
内変に要する時間
私がハンドリングした日は、土曜日でした。到着空港は24時間運用空港だったものの、週末は税関職員も少ないとのこと。そのため、内変作業には3時間程要した記憶があります。
その間、格納庫内のオフィスで待機し、商社の方やその他関係者と話したりしていましたが、なかなか税関さんからの連絡はありません。待ちくたびれたとき、ようやく連絡が来ました。
ここでようやく私の役目は終了しました。私一人でその空港に出張したこともあり、関係者の方々にご挨拶して、空港を出るときは本当にほっとしました。
まとめ
当日は10月末で、ランプ内に吹く風も冷たかったことをよく覚えています。ロシアでテクニカルランディング(給油のための着陸)をした空港から、なかなかMVTが来ず、やきもきしたことも今は良い思い出です。
プライベート・チャーター機のハンドリングには、本当に様々な種類の業務があるんだなと知った瞬間でもありました。定期便ではできない経験も色々とできましたが、どんな種類の業務でも対応しなければならず、難しさも痛感しました。