LL業務 ダメージ編

前回に引き続き、LL業務についてです。今回はDPR(ダメージ)について詳しく見ていきます。

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ダメージ対応とは?

ダメージはLL用語で、DPRと言います。

チェックインバゲージが自分の手元に戻ってきたとき、破損があった場合のケアを行う業務です。スーツケースの場合だと、本体に亀裂が入っていたり、持ち手が破損したり、車輪が取れるといったケースが想定されます。

FSCとLCCで異なる対応

DPRへの対応は、各エアライン毎に異なります。FSC(フルサービスキャリア)とLCC(ローコストキャリア)でも対応は異なります。

私は外資系LCC2社と、外資系FSCの2社のハンドリングを経験しました。

LCCキャリアはDPRについては、最低限のことしか行いません。破損に関しては、クラック(ヒビ)など軽微なものへの補償は行わない場合がほとんどではないでしょうか。しかし、PAXが海外旅行保険に加入している場合、その保険でバゲージ破損をカバーできる場合があります。そういった場合は、エアラインが破損証明書を発行し、PAXにお渡しします。

この保険会社提出用の証明書を、PIR(pilferage and Irregularity Report)と呼びます。

しかし、スーツケースの車輪が根本から取れてしまったといった場合は、代替品(といっても最低限のものですが)をお渡しすることが稀にありました。

これに対してFSCキャリアでは、修理業社に破損したバゲージを送付し、修理対応を行う場合がありました。

まとめると、以下のようになります。

LCC→大半のダメージについては、ノーケア。しかし、もはや使用ができなくなるレベルでのダメージであれば、エアラインが代替品を支給する場合あり。修理はエアラインが発行する証明書を保険会社に提出すれば、対応可。

FSC→破損についての対応は、エアラインケア。エアラインの出費でバゲージを修理することがある。

※かなりざっくりとした分類ですので、実際にご利用のエアラインに確認が必要です。

ハンドリング時の注意

さて、グランドスタッフとしてバゲージハンドリングをする際の注意点について見てみましょう。

まず重要なのは、出発業務における対応です。チェックインカウンターでバゲージをお預かりする際、持ち手が破損している、亀裂かあるといった具合に、すでに破損している箇所を、バゲージタグに記録しておく作業が必須となります。

バゲージタグの裏面には、そのバゲージをチェックインする際に既に生じていた破損箇所を記録できるスペースがあります。破損箇所を持ち主のPAXと一緒に確認し、サインを頂きます。これを「Limited Release」と呼びます。

これは到着空港でLL業務を行うスタッフにとって、非常に重要な作業です。既に破損のあるバゲージについて、この作業を忘れてしまったとしましょう。仮に悪意のあるPAXであれば、到着空港で既に破損していた箇所についても、エアラインのせいにして補償を受けようとする場合が考えられます。

PAXからダメージの申告があった場合、到着LL担当はバゲージタグの裏面の記載をまず確認します。よって、お預かりした際にそのバゲージの状態を確認することが、最も重要な作業と言えます。

まとめ

私がLLを担当していた際、LCCのPAXでも破損について申告してくる方は、少なくありませんでした。そうした申告をしてくるのは、やはり日本人のPAXが多かった印象です。ダメージではないものの雨の日に、返却されたバゲージが濡れていると言うクレームを入れてきたPAXもおり、LL担当としては日本人PAXへの苦手意識は強かったです。JALやANAでは、雨で濡れたバゲージを拭いて返却しているようですので、それが当たり前だと思ってしまったのでしょう。

日本の空港では、グラハンスタッフが丁寧にバゲージを扱っていますが、海外では決してそうでないところも多いようです。日本の丁寧なハンドリングは素晴らしいですが、世界的に見ると少数ということは念頭に置いていた方が、自分自身のバゲージが破損した際、がっかりせずに済みますね。