3月25日に投稿した以下の記事で、筆者の友人が勤務するグランドハンドリング会社で、派遣社員が雇止めにあっているという話題について触れました。
今回はそれについての続報と、今後の航空業界の雇用についてお話したいと思います。
羽田空港グランドハンドリング会社の状況
友人の勤務するグランドハンドリング会社では、派遣社員が雇止めとなったそうです。
それに続き、アルバイト従業員の大半(数人を除く)も一時帰休という形で、4月の1ヵ月間は自宅待機で休業になったとのこと。残された数人も、飛行機のグランドハンドリング業務ではない業務を担当するか、他の大半のアルバイト従業員と同じく、自宅待機を選択せざるを得ない状況だそうです。
ちなみに、友人も担当している定期便は全て欠航となったため、定期便のハンドリング業務は消滅状態となりました。友人は正社員なので、雇用に影響が及ぶのは、最終局面になってからだと考えます。
一時帰休とレイオフ
上記の一時帰休とは、会社との雇用関係は継続したまま、業務には従事しないという状態で6す。この場合、賃金の6割を会社が従業員に支払う義務が生じます。
ところで、海外企業は、景気が悪化して雇用を守れないといった状況で、レイオフを行うことがしばしばあります。
レイオフとは、日本語では一時解雇です。海外では自動車メーカーで、2008年のリーマンショック時などの際、度々行われています。一時的といっても、解雇には変わりありませんので、会社との雇用契約は一旦消滅することとなります。当然、解雇されてから再雇用されるまで、給与は支給されません。
レイオフは景気が回復して、再度従業員を雇用できるという見通しが立った際には再び雇用しますという前提で、一時的に従業員を解雇する制度です。社歴が長く、その会社で長く勤務する社員が、再度雇用される際に優先されるという特徴があります。
https://jinjibu.jp/keyword/detl/1015/
日本の人事部 レイオフより
上記サイトに、レイオフや一時帰休についての詳細な解説がありますので、興味のある方はご参照ください。
今回のコロナウイルス感染拡大に伴う大規模運休で、エアカナダ、スカンジナビア航空等が数千人規模の従業員を行っています。
ANAが客室乗務員を5000人を一時帰休させる事態となり、雇用に大きな影響が出ています。
日本の航空業界の企業では、現段階で、一時帰休させる企業が増えているようです。しかし、今後この状況が続くと、レイオフや雇止め、解雇に踏み切る企業が激増するのではないかと、私は考えています。本日(2020年3月30日)の段階では、東京でも一日数十人の感染者が発生しており、収束の見通しは全くありません。
今後の航空業界の雇用の見通しは?
今後も派遣社員、アルバイト、契約社員といった非正規社員は、航空業界で急激なリストラ対象となると考えています。
あと数か月続いた場合、航空会社やグラハン会社には正社員しか残らない可能性があります。しかし、正社員の雇用についても、時間の問題である可能性も否定できません。しかし、航空業界で多数を占める非正規社員が業界から抜けると、コロナウイルス感染拡大が収束後、ハンドリング人員が確保できないのではという考えもできるのではと、私は思っています。
特に羽田空港では、当初の予定では、2020年3月29日から国際線の大幅増便が予定されていました。東京オリンピックは2021年夏頃に延期予定とのことで、来年はこれらの便が感染拡大収束して、予定通りに運航するとなる仮定します
。各社とも、非正規社員の大幅リストラを行うと、状況が元に戻った際、ハンドリング自体を航空会社から受託できない状態となると予想します。
この状況が少しでも早く収束しないと、航空産業に従事する人員の雇用に深刻な影響が出て、他の産業に人員が流出する可能性があります。一旦流失した人材は、雇用が回復した際、一定数は航空産業に戻ると考えますが、一定数は航空業界に戻らないでしょう。
この場合、グランドハンドリングであればPBBの操作、プッシュバック、LAV(トイレの汚水処理)、WAT(機内の飲料水補給)といった作業ができる技能を持った人員が足りないという事態も発生するかもしれません。
旅客グランドスタッフであれば、カウンターのスーパーバイズ、ゲートの責任者を務められる人材の不足といった具合です。
業界内での人材の動きも、あとどのぐらいでこの状況が終わるのかという事実によりますので、全く予測不可能な状況です。しかし、予想されるのは上記のようなシナリオですね…
まとめ
今回のコロナウイルス感染蔓延で、航空業界内で人材の流動が大きくなるのではと私は予想しています。感染拡大が収束した後に、リストラで航空業界からの流失した人員を補うため、空港業務離れて数年経った人へのニーズが高まることも予想されます。そしてそれらの人たちが、再び航空業界に戻るという展開もある可能性もあるのではと考えています。
以前の記事でも、政界情勢が国際線定期便に携わるスタッフに及ぼす影響について、お話ししたことがありますが、現在航空業界は、非常に厳しい現実に直面しています。
連日コロナウイルスの新規感染者のニュースには、非常に憂鬱な気分になるばかりです。
日々航空輸送に携わっている方々が、一日も早く平常なハンドリング業務に戻れるよう、元業界人として強くお祈りしております。