油断大敵 ミスチェックインとは?

チェックイン業務は、グランドスタッフのメイン業務です。各社ともシステムのインターフェースは異なり、操作方法も違います。プログラマーのようにコマンドを打ち込んでいき、チェックインするシステム、そしてクリックする作業がメインで簡単に作業が済んでしまうエアラインもあります。

さて、今回はミスチェックインについてのお話です。チェックインは、慣れてくれば簡単に行うことができます。しかし、慣れてくる頃にミスは発生します。

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ミスチェックインとは?

文字通り、誤ってチェックインしてしまうことを指します。内容は様々ですが、以下のように分類することができます。

  1. 別のPAXを誤ってチェックインしてしまう(PAXの取り違え)
  2. そのシートに本来座れないはずのPAXをチェックインしてしまう
  3. バゲージタグを誤って発行してしまう
  4. 渡航書類の確認を忘れてしまう
  5. 必要事項を確認せずにPAXをアクセプトしてしまう

大まかに、以上の通りに分類することができます。それぞれの項目について、具体的に見てみましょう。

ミスチェックインのタイプ別解説

1.別のPAXを誤ってチェックインしてしまう(PAXの取り違え)

チェックイン時は、パスポートを端末にスワイプするところから作業が始まるエアラインが多いです。しかし、エアラインによってはパスポートスワイプが出来ずに、氏名やPNR(Passenger Name Record、予約番号のこと)を打ち込んで検索する手段を取っているところもあります。パスポートスワイプができるシステムでも、PAXのパスポート状態によってはこれができず、手打ちで検索する場合があります。

そういったときに起こり得るのが、別のPAXを誤ってチェックインしてしまうということでう。中国の方は同姓同名の方も多く、名前だけの確認では危うい場合もあります。

当たり前ですが、しっかりと生年月日やパスポート番号を確認する必要があります。

2.そのシートに本来座れないはずのPAXをチェックインしてしまう

航空機にはEXIT ROWがあります。緊急脱出用の非常口のそばの列のことで、この列にあるシートは、他の列の座席よりもシートピッチが広かったりします。

EXIT ROWにアサインできるPAXには条件があります。それは、以下の通りです。

  • 年齢が一定以上であること(エアラインによって異なる)。
  • 英語やそのエアライン所属国の言語を理解し、緊急事態の際にはCAの指示に従って、緊急脱出の手伝いができること。

エアラインの規定に満たない年齢のPAXをアサインしたり、搭乗後のCAからの外国語での質問に応えられなかったりして、このPAXのシートを変更してださいと、CAから言われることもあります。

3.バゲージタグの誤発行

バゲージタグ発行の際にも、油断は禁物です。PAXがバゲージをチェックインする際、各バゲージにアタッチするための、バゲージタグを発行する必要があります。

バゲージタグは案外破れやすいものです。カウンターが混雑時に、TCPが多いPAXを受け付けている際は、焦ってしまいがちです。そういったとき、バゲージにタグをアタッチする際、破ってしまうことがあります。その際当然再発行するのですが、注意が必要なのはそこです。

破れたバゲージタグは、システム上から消去する処理が必要です(VOID処理と呼びます)。新しいバゲージタグを発行してから、このVOID処理をしないと、システムは新たなバゲージが追加されたと認識してしまうため、最悪の場合、実際の個数とシステム上の個数が一致しない場合があるからです。

4.渡航書類の確認を忘れてしまう

ある国に渡航する場合には、渡航要件というものがあります。ビザが必要だったり、必要ない場合でも最大滞在日数は30日、90日といった具合に決まっています。

日本国籍を有する人は、ビザなしで渡航できる国が非常に多いです。しかし、他国はそうではないケースも多く、渡航要件としてビザが設定されている場合も多いです。

落とし穴はまだあり、パスポートの残存期間を要件とする場合もあります。例えば、ベトナムの場合はベトナムの出国予定日から、更に6か月パスポートの有効期間が残っている必要があります。

渡航要件チェックには、TIMATICというシステムを利用します。下記の記事をご覧ください。※下記記事でもご紹介していますが、エアライン各社のサイトで、一般の方でも使用することができます。

今回は、国際線グランドスタッフには必須のツールである、TIMATICについてです。 TIMATICとは? TIMATICとは、IATA(...

こういった渡航要件をしっかりチェックしないと、飛行機で現地に到着したものの、現地で入国拒否をされ、INAD(Inadmissible passenger)となってしまう可能性があります。ミスチェックインにより、INADを発生させてしまった場合、エアラインが罰金を支払わなければならないケースがあります。

5.必要事項を確認せずにPAXをアクセプトしてしまう

各エアラインによって異なりますが、妊娠中の女性が航空機に搭乗するためには、制限がかかる場合があります。妊娠初期の段階だと、何も制限がない場合が多いです。しかし、妊娠期間の後半になってくると、医師の診断書が必要になってくるケースがあります。ただ診断書があればいいという訳ではなく、搭乗日から何日以内というルールがあります。

診断書がなかったり、有効期限が切れていたりして、本来搭乗できないはずのPAXを搭乗させてしまったという事態となれば、大変です。

まとめ

チェックイン作業を行う際には、確認事項が沢山あります。これを怠ってしまれば、PAXの安全や航空保安にも脅威となりかねません。グランドスタッフが負う責任というのは、大きいものがあります。

私がグランドスタッフ時代に在籍していた会社で、渡航書類の確認を怠ったために、INADが立て続けに発生してしまったことがありました。本来、TIMATICで渡航要件をしっかり確認していれば、起きなかったはずの事象です。レベルが低いとしか言いようがなく、恥ずかしいミスです。TIMATICの検索結果は、長い文章になることが多く、しかも全文英語です。忙しい時は焦るのはわかりますが、一度そのようなミスが起きてしまうと、エアラインが支払う罰金等で、大変な事態となります。

慣れれば簡単と言ってしまえばそれまでですが、責任は重い作業です。しっかりと確認を励行し、作業に臨みたいですね。