プライベート機ハンドリング編 運航日時リクエストを受理する

前回の記事では、プライベート・チャーター機のハンドリング会社への転職を決意したきっかけ等をお話ししました。

今後お送りするプライベート機・チャーター機編では、定期便との違いも含め、プライベート・チャーター機はどういったハンドリングをしているのか、という点についてお話ししていきます。

今回は、プライベート機の運航リクエストを受理するところから見てみましょう。

プライベート機の運航日時リクエスト

プライベート機は、個人や企業が自分たちが使うために所有する機体です。各機体のオーナーは、運航管理会社に運航業務を委託していることが多いです。それらの運航管理会社から、日本の空港にある代理店(ハンドラー)に連絡が入り、運航に係る調整業務を行っています。

それでは、中国在住の機体オーナーが東京での商用のため、北京首都国際空港(ZBAA)から羽田(RJTT)への運航を希望しているという設定で手順を見てみます。

まずは中国の運航管理会社から、日本のハンドラーにメールで発着希望日時の連絡があります。

機体情報は以下の通りです。

機体国籍:中国

登録記号:B1234

機種      :GLF5(ガルフストリーム5)

発着日時のリクエストの書き方

発着希望日時は、

ETD ZBAA 20MAR 0000Z to RJTT

ETA RJTT  20MAR 0400Z from ZBAA

ETD RJTT  23MAR 0300Z to ZBAA

ETA ZBAA  23MAR 0600Z from RJTT

上記のようなフォーマットで依頼が入ってきます。

知らない人が見たら、何がなんだかわからないですよね。これを順番に解説していきます。

各用語についての解説

まず、ETDはEstimated Time of Departureで出発予定時刻、ETAはEstimated Time of Arrivalで到着予定時刻となります。これらの用語は、当ブログの過去記事でもご紹介しました。

出発、到着時刻に関する用語

その次は、ZBAA、RJTTという4レターコードが書かれています。それぞれ、ZBAAは北京、RJTTは羽田です。

プライベート・チャーター機のハンドリングにおいては、旅客グランドスタッフと違い、4レターの空港コード(国際民間航空機関、ICAOが規定する、空港を表す4文字のコード)を使用することが多いです。

4レターは、運航関係の分野で使用されることが多いようですが、グランドスタッフは使用しません。私も、プライベート機代理店に入社する前は、使用していませんでした。

https://flyteam.jp/airports/icao/A

Flyteam 空港 / エアポートの4レターコード(ICAOコード)一覧より

上記サイトで、4レターコードの一覧を見ることができます。

次に、0000Zや0400Zというように、時刻の横にあるZは何でしょうか。これは、協定世界時(UTC,Universal Coordinated Time)といって、世界各地の標準時間を決める際、元となる時刻とされています。

私も、細かい説明はできないのですが、とにかくこれに+9時間が日本時間となります

先程のリクエスト文の意味

これらの知識を基に、先程のリクエスト文を読み解いて行きましょう

ETD ZBAA 20MAR 0000Z to RJTT

北京を3月20日、日本時間の0900に、羽田に向かって出発したい。

ETA RJTT  20MAR 0400Z from ZBAA

羽田に3月20日、日本時間の1300に、北京から到着したい。

ETD RJTT  23MAR 0300Z to ZBAA

羽田を3月23日、日本時間の1200に、北京に向かって出発したい。

ETA ZBAA  23MAR 0600Z from RJTT

北京に3月23日、日本時間の1500に、羽田から到着したい。

プライベート機は、各オーナーの希望時刻に発着できるというメリットがあります。もちろん、これは各空港の発着枠の空き具合によります。

まずは、このリクエストを正確に読み解く必要があります。

発着枠のリクエストを受ける際、注意すべき点とは

このリクエストを受ける際、以下の点に注意する必要があります。

  • リクエストの時間が、空港の運用時間内に収まっているか(成田のように、早朝や深夜の発着ができない空港もあります)。
  • 各空港の定める、駐機制限の日数をオーバーしてないか(羽田は4泊5日という駐機制限があります)。

次はこのリクエストに沿って、国土交通省航空局(CAB)に発着枠の空きを照会し、発着枠を実際に取得するという作業に入ります。